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2026. 08. 18
生産者来日

世界が熱視線を送る、注目の産地エトナ その唯一無二の魅力を映す「ピエトラドルチェ」

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来日したアジア・太平洋ブランドマネージャーのマリーノ・ブラッキュ氏

 近年、世界中のワインラヴァーから大きな注目を集める、シチリア島東部のエトナ。活火山が生み出す複雑な土壌と高標高の冷涼な気候、そしてそれぞれ異なるテロワールの個性を持つコントラーダ(エトナ特有の区画の概念)によって、今、イタリア屈指の注目産地として知られています。

 そんなエトナの魅力を語るうえで欠かせない存在が、ピエトラドルチェです。土着品種や古樹にこだわり、エトナのテロワールをありのままに表現するワイン造りで高い評価を獲得しています。今回来日したアジア・太平洋ブランドマネージャーのマリーノ・ブラッキュ氏は、長年ミシュラン星付きレストランでソムリエを務めた経験を持つ人物。彼は「ピエトラドルチェはエトナを最も忠実に表現する生産者」と語ります。

 では、その"エトナを最も忠実に表現する生産者"とは、どのような存在なのでしょうか。来日セミナーで語られた言葉をひもときながら、ピエトラドルチェの哲学と各キュヴェに宿るエトナの魅力を探ります。

活火山が生み出す、他に類を見ないテロワール

エトナ山とイオニア海.jpg雪をかぶったエトナ山とイオニア海

 イタリア最大の島シチリア。その東部にそびえるエトナ山は、標高約3,300mを誇るヨーロッパ最大級の活火山です。エトナDOCの畑はこの山を囲むように広がり、その多くが標高600900m付近に位置しています。1990年頃まで、この地には荒廃した段々畑が広がっていました。しかし、ワインの価値が「どこでも造れる味わい」から「その土地でしか生み出せない個性」へと移り変わるなかで、エトナの特異なテロワールが世界中の生産者の注目を集めます。やがて放棄されていた畑の再開墾が進み、新たな投資や生産者の参入も相次ぎました。こうしてエトナは、今やイタリア屈指の注目産地として存在感を高めています。

 この産地を読み解くうえで重要なのが、"気温の日較差"です。太陽がしっかりと照り付けるイタリア南部の地域は温暖になりすぎることがありますが、エトナは高い標高により昼は暖かく、夜は大きく気温が下がります。この大きな寒暖差によってブドウはゆっくりと成熟し、生育期間を十分に確保することで、豊かなアロマと伸びやかな酸を蓄えていきます。

 さらに特徴的なのが土壌です。火山灰や溶岩、砂、石灰質などが複雑に混ざり合い、畑ごとに異なる表情を生み出しています。エトナのワインに見られる独特のミネラル感も、こうした多様な土壌に由来するとマリーノ氏は語ります。もうひとつ、エトナを語るうえで欠かせないのが「コントラーダ」と呼ばれる区画の概念です。土壌は絶え間ない火山活動と密接に結びついており、斜面の向きや標高、土質の構造によって個性が細かく異なります。エトナには133ものコントラーダが存在するといわれ、それぞれがまるでブルゴーニュの「クリュ」のように固有の特徴を備えています。

 エトナ山の東に広がるイオニア海からの風も重要です。夏は気温の上昇を抑え、冬は寒さを和らげることで、ブドウが健全に育つ穏やかな環境をもたらします。

ブルゴーニュでもピエモンテでもない、エトナという個性

ピエトラドルチェワイナリー.jpg2016年に完成したセラー。外装にはエトナの溶岩石を使用し、屋上にはエトナの在来植物を植えたエコフレンドリーな建築

 そんなエトナの可能性にいち早く着目したのが、ピエトラドルチェの創業者ミケーレ・ファロ氏です。家業である種苗会社で培った知識と経験を生かし、2005年、エトナ北麓のモンテ・ドルチェ周辺に残る古樹の畑を取得。エトナのテロワールをありのままに表現するワイン造りをスタートさせました。

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創業者のミケーレ・ファロ氏

 「土地、環境、そしてエトナの伝統への敬意」をワイナリーの哲学に掲げ、創業以来、土着品種とテロワールに真摯に向き合ってきました。さらに、世界的なワイン評論家ジャンシス・ロビンソンMWが同社のアルキネーリ・エトナ・ロッソを「お気に入りのエトナワイン」のひとつとして紹介したことでも知られ、現在ではエトナを代表するトップワイナリーとして世界から注目を集めています。

 近年、エトナは「シチリアのブルゴーニュ」と称されることも少なくありません。しかし、ピエトラドルチェが目指しているのは、名産地の再現ではなく、エトナにしかない個性を表現すること。その哲学を端的に表したのが、マリーノ氏の次の言葉です。

 「世界には偉大なワイン産地が数多く存在します。しかし、エトナの魅力はどこかに似ていることではなく、どこにも似ていないことにあります。火山性土壌、高標高、土着品種、そして樹齢を重ねた古樹。私たちはそうしたエトナ固有の要素を、できる限り純粋な形で表現したいと考えています。」

エトナの記憶を受け継ぐ古樹の畑

ピエトラドルチェ畑.jpg伝統的なアルベレッロ仕立てで栽培されるブドウ

 ピエトラドルチェの個性を支えているのが、フィロキセラ禍※1を生き抜いた古樹の存在です。なかには平均樹齢100年以上を誇る自根のブドウ樹も残されています。同社は、ワイヤーや支柱を使わない伝統的なアルベレッロ仕立て(株仕立て)を今なお継承していますが、この栽培法は手間がかかるうえ、高樹齢のブドウ樹は収量も限られます。それでも彼らが古樹と伝統を守り続けるのはなぜなのでしょうか。

 その理由についてマリーノ氏は、「エトナの個性を最も素直に表現できるから」と説明します。伝統的なアルベレッロ仕立ては、強い日差しから果実を守りながら収量を自然に抑え、凝縮感のあるブドウを育みます。彼らにとって古樹やアルベレッロ仕立ては単なる栽培技術ではなく、エトナの歴史や文化を未来へ受け継ぐための大切な遺産でもあるのです。

※フィロキセラ禍:19世紀後半、ブドウの根に寄生する害虫フィロキセラがヨーロッパ中のブドウ畑を壊滅的な被害に追い込んだ出来事。

テロワールを引き出すワイン造り

メルマガ用tinaia.jpgピエトラドルチェの醸造所。左側がコンクリートタンク 右側がステンレスタンク

 ピエトラドルチェのワイン造りにおける哲学はシンプルです。それは、エトナの個性をできる限りそのまま表現すること。収穫はすべて区画ごとに手摘みで行い、醸造ではステンレスタンクやコンクリートタンク、木樽をキュヴェごとに使い分けながらも、過剰な抽出は行いません。樽の使用も最小限にとどめ、「果実や土地の個性を隠さない」ことを徹底しています。

 その姿勢は品種選びにも表れています。赤はネレッロ・マスカレーゼ、白はカッリカンテというエトナを代表する土着品種が主役。特にネレッロ・マスカレーゼは、色調を補うためネレッロ・カプッチョをブレンドすることも一般的ですが、ピエトラドルチェは100%ネレッロ・マスカレーゼにこだわります。目指しているのは力強さではなく、クリアで端正なエトナ本来の表現。そのグラスに映し出されるのは、造り手の技術ではなく、エトナという土地そのものなのです。

グラスで感じるエトナの多彩な表情

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左から「エトナ・ビアンコ」、「エトナ・ロッソ」ラベルに手描きされた網目模様は、エトナ火山の噴火によって舞い散る火の粉や石のかけらを表現。火山灰や岩石に由来する豊かな土壌は、健全なブドウ栽培を支える重要な要素となっています。

ここからは、ピエトラドルチェの各ワインを通して、その味わいの魅力と個性をひもときます。

『エトナ・ビアンコ』

エトナ山北側ソリッキアータにある標高約800mの畑で育つ若樹のカッリカンテを使用した、フレッシュで爽快な白ワイン。「爽やかな酸味の後に、地中海のハーブを思わせる香りや柑橘のアロマが広がります。」とマリーノ氏。余韻には塩味と豊かなミネラル感が心地よく続きます。

『エトナ・ロッソ』

マリーノ氏が「まさにエトナ全体を表すようなワイン」と語る、若樹のネレッロ・マスカレーゼから造られるチャーミングな赤ワイン。ステンレスタンクで発酵し、新樽を用いずに熟成することで、品種本来のピュアな果実味を引き出しています。淡く美しい色合いからピノ・ノワールに例えられることもありますが、より素朴で土地に根差したエトナらしい個性が表現されています。

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左から「アルキネーリ・エトナ・ビアンコ」、「コントラーダ・ランパンテ・エトナ・ロッソ」、「コントラーダ・サント・スピリト・エトナ・ロッソ」

『アルキネーリ・エトナ・ビアンコ』

エトナの東側に位置する地区、「ミロ」の樹齢150年のカッリカンテを使用。海風の影響を受ける恵まれた環境から生まれる、クリーミーな質感とシャープなミネラル感が調和した白ワインです。「ミロはエトナの白ワインのグラン・クリュとも称される特別な地区。この地に畑を持てることは非常に幸運なんです。」とマリーノ氏。

当主のミケーレ氏も「エトナは非常に多彩で、パズルのようだ」と話します。こうした複雑で個性豊かなコントラーダの概念を表現しているのが、コントラーダシリーズです。

『コントラーダ・ランパンテ・エトナ・ロッソ』

エトナ山北麓、標高約850mに位置する区画、ランパンテ。その土壌は火山灰由来の砂質土壌で、ワイナリー名の由来となった石(ピエトラ)が数多く見られます。樹齢8090年の古樹が育つこの畑から生まれるワインは、「エトナ・ロッソ」に比べてより凝縮感と奥行きのある味わいが特徴。エトナの力強さと複雑さをより明確に感じられる一本です。

『コントラーダ・サント・スピリト・エトナ・ロッソ』

ランパンテが力強さを表現するワインだとすれば、サント・スピリトはエレガンスを語るワインです。標高850900mの冷涼な区画で育つ樹齢90年の古樹から生まれるこのキュヴェは、華やかな香りと伸びやかな酸が魅力。マリーノ氏が「シーフードとも寄り添う唯一の赤ワイン」と評するように、驚くほど軽やかでピュアな表情を見せてくれます。

マリーノ氏にとって「エトナらしさ」とは

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ショップイベントで解説をするマリーノ氏

「エトナのワインをエトナとして感じてほしい」。

 この言葉には、ワインを造る側の信念と同時に、飲み手にエトナの個性をまっすぐ受け取ってほしいという思いが込められていました。エトナらしさとは何か。マリーノ氏はその答えとして、ミネラル感や酸の高さ、輪郭のくっきりとしたシャープさ、そして熟した果実の甘やかなニュアンスを挙げます。それは、南イタリアのワインに対して抱きがちな"濃厚で力強い"というイメージとは少し異なる、フレッシュでエレガントな味わいです。

 世界中のワインラヴァーを魅了する理由は、エトナがもつ唯一無二の個性にあります。その土地ならではの表情を映し出すワインが、多くの人々を惹きつけてやみません。ピエトラドルチェのワインは、そんなエトナの魅力を雄弁に物語っています。

■ピエトラドルチェ  https://www.enoteca.co.jp/producer/detail/2236