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モンテスは世界のプレミアムワインへ。看板シリーズのリニューアルとこれからのモンテスの挑戦
天使が描かれたラベルでお馴染み、プレミアム・チリワインの先駆けであるモンテス。2026年より看板シリーズであるモンテス・アルファが「世界基準のプレミアムワイン」という新たなステージへと羽ばたくべく刷新されました。それに合わせて、チーフ・ワインメーカーのアウレリオ・モンテス・デル・カンポ氏と、エリア・マネージャーのエドゥアルド・スターク氏が来日し、刷新の背景や今後の挑戦について語ってくださいました。
40年近くエノテカと歩みをともにしてきたモンテス。その歩みの先に描く未来と、今改めて語られる彼らの想いをお届けします。
左からチーフ・ワインメーカーのアウレリオ・モンテス・デル・カンポ氏、
エリア・マネージャーのエドゥアルド・スターク氏
"プレミアム・チリワイン"を切り拓いてきたモンテス
モンテスは1988年、アウレリオ氏のお父様を含めた、チリワインの新たな可能性を信じた冒険心を持つ4人が集まり、立ち上げられたワイナリーです。創業当時、アウレリオ氏は13歳。友人がビーチへ遊びに出かける中、ワイナリーの手伝いをして過ごしていました。
手伝いをする13歳のアウレリオ氏(左)と倉庫で作業する様子(右)
当時の写真からも伝わるように、創業当初のモンテスは倉庫での作業から始まりました。今でこそ世界的に名が知られるワイナリーへと成長したモンテスですが、その原点には一歩ずつ丁寧に積み重ねてきた歴史があります。 さらに創業当初から、海外輸出を意識しており、初めての輸出先はアメリカでした。当時は誰もモンテスに期待しておらず、「高品質ワインがひしめき合うアメリカの市場に挑戦するなんてクレイジーだ。すぐに撤退するだろう」と見られていたそうです。それでもモンテスは、揺るぎない信念のもとで品質を追い求め、人と資源をその向上に注いできました。
"品質にこだわる"、モンテスのそうした哲学の根底にあるのは非常にシンプルな考え方です。それは、「良いワインは、良いブドウからしか生まれない」ということ。
「ブドウ栽培において、チリは楽園のような環境です」とアウレリオ氏。その理由は、南北に細長い地形による多様な気候、冷たいフンボルト海流がもたらす冷却効果、そして太平洋・砂漠・アンデス山脈に囲まれた自然の要塞のような地形にあります。害虫や病原菌の影響を受けにくく、昼夜の寒暖差や乾燥した気候によってブドウが健全に成熟しやすいことは、良いブドウを育てるうえで大きな強みです。ただし、恵まれた土地があるだけで自動的に高品質なブドウが生まれるわけではありません。モンテスはその自然条件を土壌や品種ごとに細かく読み解き、どの区画で、どのブドウを育てるかまで見極めています。
強みの一つが、約564haもの自社畑を持っていることです。モンテスは畑を所有しているからこそ、長い時間をかけて土壌を調べ、品種ごとの適性を明らかにしています。メインとなるエリアは、コルチャグア・ヴァレー内に位置する「アパルタ・ヴィンヤード」と「マルチグエ・ヴィンヤード」です。
モンテスが畑を所有する「アパルタ・ヴィンヤード」と「マルチグエ・ヴィンヤード」。
ワイナリーはアパルタ・ヴィンヤード内に位置。
モンテスでは何年もかけてボーリング調査を行い、土壌の成分構成を細かく確認。その情報をもとに、栽培するブドウ品種をどの畑の、どの区画に植えるのが最も適しているか研究を行っています。単に広い畑を持っているのではなく、区画ごとの個性を把握し、ブドウのポテンシャルを最大限高めるために、品種と栽培地を緻密に組み合わせているのです。
●アパルタ・ヴィンヤード
渓谷が連なるアパルタ・ヴィンヤードでは、モンテスが栽培するブドウの約70%が斜面に植えられています。斜面であることで構成される土の要素にむらができ、その結果、多様な土壌が生まれます。モンテスはこうした違いを細かく見極め、アパルタ・ヴィンヤードでは13種のブドウ品種をそれぞれ最適な区画に植え分けています。
アパルタ・ヴィンヤードの土壌構成
出典:Google Earth(© Google, Image © Maxar Technologies)
アパルタ・ヴィンヤードで栽培するブドウ品種
なんと千ヵ所ほど土壌を掘り起こし、土壌の成分構成を確認。水はけの良い土壌を好むカルメネールは砂質土壌、保水性のある土壌が適しているメルロは粘土質土壌と、品種ごとに最適な環境に細かく植え分けています。それぞれのブドウが最適な環境で育つことで、果実味や香り、酸味の調和がとれた質の高いブドウが生まれるのです。
●マルチグエ・ヴィンヤード
コルチャグア・ヴァレーの北西部に位置するマルチグエ・ヴィンヤードは、風がよく吹く冷涼な環境です。風はブドウ畑の温度を下げ、成熟をゆっくり進めるため、果実のフレッシュさや香りを保ちやすくします。一方で非常に乾燥しており、10月から8月まで全く雨が降らないこともあるエリア。そのため約14km離れた川から水を送り、必要な量を見極めながら灌漑を行っています。土壌の年代を調べると、アパルタが約1千万年前であるのに対し、マルチグエはさらに古い1億年以上前の土壌が広がっており、同じコルチャグア・ヴァレー内でもまったく異なる個性を持っています。
マルチグエ・ヴィンヤードの土壌構成
出典:Google Earth(© Google, Image © Maxar Technologies)
マルチグエ・ヴィンヤードで栽培するブドウ品種
出典:Google Earth(© Google, Image © Maxar Technologies)
アパルタ・ヴィンヤードとは土壌の特色が違うため、マルチグエ・ヴィンヤードでも土壌を細かく調査し、適した品種を植え分けています。こちらもエリアごとの特性を把握することで、品質の高いブドウを生み出すことにつながっています。
また、良いブドウ作りにおいて、モンテスが家族経営であることも大きく関わっているとアウレリオ氏は話します。「ブドウ栽培が難しいのは、ブドウを植えてから良し悪しの結果が分かるまで10~20年もかかるところ。私たちは家族経営であることから、代々の知見を繋ぎ続け、その結果を見極めることができています。」土壌を調べ、区画を選び、品種を植え、出来上がったワインを確認する......その判断の正しさは、長い年月を経て初めて分かるものです。だからこそ、お父様の代から積み重ねてきた経験と記録が、畑と向き合う判断をより確かなものにし、その積み重ねが高品質なブドウを生み続ける力となっているのです。
世界を見据えて進化するモンテス・アルファ・シリーズ
モンテスの中でも特に多くの人に親しまれているモンテス・アルファ・シリーズ。2023年ヴィンテージより『モンテス・アルファ・カベルネ・ソーヴィニヨン』のブレンドを刷新しました。発売以来、細かな改良を重ねてきましたが、ブレンドを大幅に変更するほどの大きなリニューアルは初めてです。
2026年4月にリニューアルした『モンテス・アルファ・カベルネ・ソーヴィニヨン』
今回のリニューアルはこれまで積み重ねてきた品質向上の延長線上にあります。
「今はチリという枠にとどまらず、世界のプレミアムワインとして認められる存在へと進化したいと考えています」と語るように、モンテスが見据えるのは、チリの中でのプレミアムワインではなく世界のプレミアムワインになること。 さらなる完成度を求める真摯な姿勢が、今回の刷新へとつながりました。世界を意識した結果、今の消費者が求めるエレガントで洗練されたスタイルへ再構築。具体的な変更点は、以下の3点です。
1.ブレンドをメルロからカベルネ・フランとプティ・ヴェルドに変更
2.使用するカベルネ・ソーヴィニヨンの畑を『モンテス・アルファ・エム』に近い区画へ変更(この畑はリジェネラティブ農業(環境再生型農業)で運用しており、除草剤や殺虫剤を使わずに下草が生えたままで、地中にはミミズなどの土壌生物が存在する畑なのだそう)
3.世界でも有数レベルの品質の高い樽へ変更
上記の変更の結果、きれいな酸味をしっかりと感じられ、複雑味が増し、余韻もより長い洗練されたスタイルへと進化しました。アウレリオ氏は「トップ・キュヴェにいっそう近づく仕上がりになったといえます。今回の刷新で完成度を高めたことで、アルファ・シリーズに限らずモンテス全体の水準も引き上がったと感じています」と、自信をのぞかせました。
『モンテス・アルファ・エム』= "チリらしさ"を表現するプレミアムワイン
モンテスにとって初めてのアイコンワインかつ、チリにとっても世界へ進出する、先駆的な存在となったスーパープレミアムワインが『モンテス・アルファ・エム』です。
『モンテス・アルファ・エム』
「あまりボルドーブレンドのワインという表現はしたくないと思っています。なぜならチリという産地そのものの力で、この水準のワインが生まれることを証明したいからです」と『モンテス・アルファ・エム』への想いを語ります。
通常のモンテス・アルファ・シリーズとの大きな違いは、使用するブドウです。チリ最高とされる単一畑「フィンカ・デ・アパルタ」において、約700か所に及ぶ詳細な区画管理のもと、アウレリオ氏が選び抜いた最良区画のブドウのみで造られます。その結果、黒コショウやプラム、カシスを思わせるような非常に豊かな香りと、長く続く余韻を備えた仕上がりに。選び抜かれた質の高いブドウによって、圧倒的な複雑さと奥行きを備えた、モンテス渾身のプレミアムワインが生まれています。
世界中のソムリエに『モンテス・アルファ・エム』を飲んでもらうと「チリらしい味わいだ」というコメントをもらうことが多いとアウレリオ氏は話します。「チリでフランスのワインを造っているのではなく、チリでチリワインを造っています。"チリらしい"と評価されるということはチリのテロワールがよく表われたワインであるのだと思っています。チリのテロワールを体現するプレミアムワインが『モンテス・アルファ・エム』です。」
勇気ある者しか造ることのできない、カルメネールへの挑戦
アウレリオ氏は1枚の画像を見せてくれました。
カルメネールを表現した、羊の皮を被った狼
元々はフランス・ボルドーが原産ですが、現在は主にチリで盛んに栽培されているカルメネールというブドウ品種があります。モンテスでは、カルメネールを"羊の皮を被った狼のようなブドウ"だと考えているのだとか。それが意味するところは、栽培の難しさにあります。メルロやカベルネ・ソーヴィニヨンが3月頃に収穫を迎えるのに対し、カルメネールの収穫は5月頃。完熟までに長い時間を要する、繊細で気難しい品種なのです。果皮が厚く、たっぷりの日照を必要とし、十分に熟していなければ青みを帯びたニュアンスが残ってしまいます。
「カルメネールの栽培は、畑と天気予報のにらめっこなんです。」
雨を恐れて早く収穫すれば、醸造直後には良い状態のように見えても、数日後には青臭いニュアンスが表れてしまうこともあるそう。
「だからこそ、勇気がないと栽培ができないのです」と語るこの品種は、ワインメーカーとしての力量が問われます。その一方で、モンテスでは「何でもカルメネールが解決してくれる」と語られるほど、素晴らしい仕上がりとなったカルメネールには絶大な信頼を寄せています。ソフトなタンニンとスパイスのニュアンス、エレガントな印象で、どんな料理にも寄り添う懐の深さが魅力です。
アウレリオ氏は「人々がカルメネールを飲んだときに表情が変わる瞬間が好きです」と話してくれました。カルメネールは知名度があまり高くない品種のため、先入観なく口にしたとき、そのクオリティに驚かれることが多いといいます。
カルメネールは平地での栽培が一般的ですが、モンテスでは研究の結果、急斜面の区画に植樹しています。排水性に優れた花崗岩質土壌と、夏でも比較的涼しい南西向きの環境により、十分に熟した凝縮感のあるカルメネールが育つためです。
『モンテス・ウィングス』
上級キュヴェの一つ『モンテス・ウィングス』に使用するカルメネールはロープを使わないと昇ることのできないほどの、約50度の急斜面に植えています。そのような環境にあるのは世界で唯一だろうとのことです。
カルメネールの品質向上に努めた結果の例として、今年からカルメネールを使ったモンテスのキュヴェ3種がルフトハンザドイツ航空に採用されています。『モンテス・アルファ・カルメネール』がビジネスクラスに、『モンテス・ウィングス』と『パープル・エンジェル』がファーストクラスのワインリストに選出。採用された理由として、豊かな香りを持つモンテスのカルメネールは空の環境でも早く香りが広がるからなのだそう。また、「ワイン愛好家のみならず、ワインを飲み始めたばかりの方にも良さが伝わりやすい味わいであることも理由の一つです」とのこと。モンテスがカルメネールの品質をさらに高め、その魅力が世界に広がっていく未来に期待が高まります。
モンテスが切り拓く、プレミアム・チリワインのこれから
実はモンテスではブドウは手作業で選果を行っています。機械での選果は、悪いブドウをすべてはじいてくれる一方で、味わいが均一なものになってしまいます。
「目視での作業は、人間なので誤りが起こることもあります。ですが、その誤った部分もワインの深みに繋がり、ちょっとした面白さをもたらしてくれます。ですので、あえて機械を入れることをしていないのです」と品質の高さを目指しながらも、アウレリオ氏はワイン造りを純粋に楽しむ気持ちも持ち続けています。
「フランスのプレミアムワインには数百年にわたる歴史がありますが、モンテスが先駆けとなったチリのプレミアムワインの歴史はまだ38年しかありません。創業当時から技術を磨き続け、ブドウを栽培する区画を厳しく選定したり、灌漑量の調整や農薬の使用をやめるなどの畑の管理方法を変更したり、などの見直しを行っています。38年を経た今もなお、ワイン造りから学ぶことは尽きません。」
モンテスが目指しているのは、フランスやイタリアなどのいわゆる"オールドワールド"をなぞることではなく、世界の舞台で輝く"チリ発"のワインを生み出すこと。学びを重ねながら一歩ずつ理想へと近づいていく、その歩みの先にどのような景色が広がるのか――モンテスのこれからに、ますます目が離せません。