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2026. 06. 19
生産者来日

「トリンバック」400周年!受け継がれる信念と続いていく物語

 フランス・アルザス地方を代表する名門トリンバックが、2026年の今年、創業400周年という大きな節目を迎えました。1626年の創業以来、13世代にわたり家族経営を続ける同メゾンは、アルザスワインの歴史と品質を世界へ発信し続けてきた存在です。
 オーナーファミリーであり12代目共同経営者ジャン・トリンバック氏に、400年続くワイン造りとトリンバックのこれからについて話を伺いました。

trimbach_1.jpgオーナーファミリー、12代目共同経営者ジャン・トリンバック氏

400年続く家族経営ワイナリー

 トリンバック家が拠点を置くのは、フランス・アルザス地方北部に位置するリボヴィレ村。人口約5000人の小さな村ながら、3つのグラン・クリュと3つの古城を有することで知られる特別な土地です。ワイナリーの真裏には畑が広がり、収穫したブドウをすぐに醸造所へ運び込める理想的な環境が整っています。

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1900年頃に撮影されたワイナリー。現在も住居として利用している建物の裏には、ワイナリーを象徴するワイン「フレデリック・エミール」を生み出すガイスベルクの畑が広がっている。

 「現在は世代交代の途中であり、ゆくゆくは13代目の担い手たちがワイナリーを牽引していきます。400年という歴史は誇りですが、最も大切なのは、代々受け継いできた考え方を未来へつないでいくことです。」

 そう語るジャン氏の言葉からは、長い歴史への敬意と、次世代へつなぐ意志が感じられました。

守り続けてきた伝統"畑で決まるワイン造り"

 トリンバックでは現在も、すべてのブドウを100%手摘みで収穫しています。急斜面での作業は決して楽ではありませんが、品質を守るためには欠かせない工程です。

 「トリンバックでは、なによりも畑仕事を重視しています。醸造所でブドウの品質を高めることはできません。品質は畑で決まるのです。」ジャン氏はそう語ります。400年にわたり受け継がれてきた"畑で決まるワイン造り"こそが、トリンバックの高品質なワインを支える原点です。

 また、アルザス地方は、石灰岩をはじめ、花崗岩、砂岩、マールなど多様な土壌が複雑に入り混じるユニークな産地。その土地ごとの個性をできる限り純粋に表現するため、トリンバックでは新樽を使用せず、大樽とステンレスタンクを併用しています。

 「私たちは醸造によって味わいを作り込むのではなく、畑が生み出したブドウ本来の個性を引き出したいのです。」

 現在、トリンバックでは自社畑と契約農家の畑すべてにおいてオーガニック認証を取得。アルザス全体でもオーガニック栽培比率は約38%と高水準ですが、トリンバックはその先を歩んでいます。

 ジャン氏によれば、ヨーロッパ、とりわけ北欧では若い世代を中心にオーガニックへの関心が急速に高まっており、今やオーガニックであることはワイン選びの重要な判断基準のひとつになっているとのこと。トリンバックでは、環境負荷を数値化するカーボンフットプリントの算定も実施しており、今後は競争力の向上と環境性能のさらなる改善に向けて、新たな技術や方針の導入も進めていく予定です。

 畑への徹底したこだわりと、未来を見据えた持続可能な取り組み。その積み重ねこそが、400年もの長きにわたり世界中のワインファンを魅了し続ける品質の礎となっています。

 「トリンバックのワインは、飲んでいただければ魅力が伝わると思っています。」そう言ってほほ笑むジャン氏。その言葉には、自らのワインへの揺るぎない自信と誇りがにじんでいました。

フラッグシップキュヴェ『フレデリック・エミール』

 そうした哲学を持ち続け、長い歴史と伝統を受け継いできたトリンバックを象徴するワインが、『リースリング・キュヴェ・フレデリック・エミール』です。
 このワインは1898年の国際コンペティションで入賞を果たし、トリンバックを世界へ知らしめた8代目フレデリック・エミール・トリンバック氏への敬意を込めて1967年に誕生しました。

trimbach_bottle.jpg『リースリング・キュヴェ・フレデリック・エミール』2019年

 使うのは、ワイナリー裏手に位置する2つのグラン・クリュ、ガイスベルクとオステルベルクのブドウのみ。南向きのガイスベルクは、一日を通して太陽の恩恵を受けることで力強さと熟度をもたらし、東向きのオステルベルクは、朝の日差しによって緊張感ある酸とフレッシュ感を生み出します。石灰岩主体の痩せた土壌は収量を抑え、凝縮感のあるブドウを育みます。異なる個性を持つ2つの畑を組み合わせることで、トリンバックならではの複雑さと均衡が表現されています。

 2つの畑のブドウをブレンドしているため、グラン・クリュの表記こそできませんが、実際には"100%グラン・クリュ"のブドウから造られるワインです。

 「フレデリック・エミールを通して、ワイナリーの歴史や考え方、そして畑へのこだわりを感じていただけたらうれしいです。」

400年の信念が世界の評価を築いた

trimbach_3.jpgテイスティングイベントにて解説をするジャン氏

 ジャン氏は、リースリングに対する市場のイメージについても語ってくれました。

 「リースリングは甘口という印象を持たれることが少なくありません。しかし、トリンバックのリースリングは一貫して辛口です。だからこそ、まずは実際に飲んでいただきたい。」

 世界的に見ても、リースリングは甘口ワインのイメージが根強く残る品種のひとつ。そのため、店頭やラベルだけではトリンバックが目指すスタイルの魅力が十分に伝わらないこともあります。しかし、ひとたびグラスを傾ければ、引き締まった酸と緻密なミネラル感、そして食事に寄り添う優れたバランスに魅了される人は少なくないと言います。

 こうしたスタイルは海外市場でも高く評価されています。近年は世界的に、食事との相性を重視した辛口ワインへの関心が高まっており、フレデリック・エミールをはじめとするトリンバックのワインは、多くのレストランやソムリエから厚い支持を獲得。テロワールを純粋に映し出す味わいと卓越した熟成能力を兼ね備えたワインとして、確固たる評価を築いています。

 「フランス国内では、ミシュラン星付きレストランで複数ヴィンテージがオンリストされることも珍しくありません。その熟成ポテンシャルはソムリエたちから非常に高く評価されています。特にマグナムボトルの人気は高く、グラスで提供されることもあります。」

 世界中で愛され続け、400年という大きな節目を迎えたトリンバック。ヴィンテージの状況を見極めながら、400周年記念キュヴェや、「ピエール・トリンバック」オマージュワインのリリースも構想しているそうです。

 4世紀にわたって受け継がれてきたのは、単なる伝統ではなく、畑を信じ、その土地の個性をありのままに表現するという揺るぎない哲学です。その精神を大切に守りながら、時代に合わせて進化を続けるトリンバック。400周年は長い歴史の終着点ではなく、新たな未来へ向かう通過点なのかもしれません。

■トリンバック  https://www.enoteca.co.jp/producer/detail/1223