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「ボデガ・チャクラ」のオーナーが10年ぶりに来日!自然の力を生かしたワイン造りへの想い
アルゼンチン・パタゴニアの地で唯一無二の個性を放つピノ・ノワールを生み出す生産者、「ボデガ・チャクラ」。この度、オーナーのピエロ・インチーザ・デッラ・ロッケッタ氏が10年ぶりに来日し、ワイナリーの哲学について語りました。
↑オーナーのピエロ・インチーザ・デッラ・ロッケッタ氏
■理想の味わいを求めて
ピエロ氏は「サッシカイア」などを手がける「テヌータ・サン・グイド」の創設者であるマリオ・マルケージ・インチーザ氏孫息子にあたります。幼少期よりマリオ氏からワイン造りの世界を教えてもらいながら育ち、イタリアワインのみならず、ボルドーやブルゴーニュなど世界中の素晴らしいワインへの知見を深めていきました。その当時(今から30~40年)のボルドーやブルゴーニュのエレガントなスタイルが、ピエロ氏のいわばおふくろの味ともいえるほど、お気に入りなのだそうです。「自分でもエレガントなスタイルのワインを造りたい」と決意し、家業を継がずに独立するといった選択に至ります。
ピエロ氏が理想とする味わいを求めてたどり着いたのが、アルゼンチンの最南部パタゴニアの地でした。「ボデガ・チャクラ」は2004年創業の比較的若いワイナリーですが、所有している畑のブドウ樹は最も古いもので1932年植樹と、古樹ばかり。古樹は根が深くまで伸びることで、様々な土壌の要素を取り込めるという利点があり、生産者にとっては"夢のようなブドウ樹"です。パタゴニアは、西は大西洋、東はアンデス山脈に挟まれており、どちらの影響も受けています。乾燥しており、十分な日照量がある、日格差があるといったブドウ栽培を行う上で理想的な土地とピエロ氏は思い、パタゴニアの畑の購入を決めました。
↑「ボデガ・チャクラ」が位置するエリア
中央に流れているのがリオネグロ川
ワイナリーが位置するエリアはリオネグロ川を底辺とし、川の両サイドは傾斜地となっているユニークな形をしています。リオネグロ川はアンデス山脈の溶けた雪が源泉で、その川の周囲にのみ植物が生えており、傾斜地の外は砂漠地帯です。そのアンデス山脈の豊富なミネラルがブドウにも与えられています。
■土地と向き合う、自然の力を生かしたワイン造り
ピエロ氏がこの土地を購入した当初は、土地が荒廃しており、土の表面はひび割れ、ブドウ樹が上手く育つ環境ではなかったそうです。「良い場所だということは分かり土地を買いましたが、イタリアから遠く離れた未知の場所だったのでどのように対処するべきか、まずは土地を知るところから始めるべく、地質調査から行いました。フランスの地質学者を呼び、ボーリング調査を行って、土壌の成分や地層について調べました。そこで重要視したのが"根本から原因を探ること"です」とピエロ氏は強く語りました。「ブドウ樹が上手く成長しないことに対して一時的な処置を施すのではなく、要因を突き止めてそれについて対処していくといったことを行いました。対処方法として採用したのは自然の力を使い、時間をかけてゆっくりと土壌を改善していくことです。ブドウ樹の間に植物を植え、土壌を守りつつその栄養素を畑に還元、そうすることで土中の生物が戻り、それを捕まえる生物が戻り......と購入当初は荒れた土壌であったところが、今では本来生息していた動植物が帰ってきて生物多様性を取り戻しました」とのことで、彼の取り組みに確かな成果があったことを教えてくれました。彼らはビオディナミ農法でワイン造りを行っていますが、その理由がここに繋がってきます。実際に自然を生かした対処法を行ったことで「本当に効果があったからビオディナミを続けているのです」と語りました。
↑「ボデガ・チャクラ」の畑の様子
畝に「カバークロップ」と呼ばれる土壌を守る植物が生えている
こうした自然なワイン造りの取り組みはボトルからも感じることができます。ワイナリーでは蜂を飼育していて、その蜂が作った蜜蝋をキャップとして利用しています。極力人工的な力を取り入れず、自然を大切にするワイン造りが「ボデガ・チャクラ」の哲学なのです。
↑蜜蝋でできたキャップ
■ピエロ氏が追い求めたエレガントな味わい
「パタゴニアの土壌や天候、それが土壌に与えた影響のすべてがまるで写真のようにワインに反映されています」とピエロ氏。例えば『バルダ』は、彼らが所有するなかでも比較的若い樹齢20年ほどの砂質土壌の畑で育つピノ・ノワールでから造られており、フローラルで透明感のある味わい。一方、『チャクラ55 シンクエンタ・イ・シンコ』は、砂質と粘土質土壌の畑で栽培される樹齢60年のピノ・ノワールから仕立てられており、旨みのような心地良い余韻が続くような仕上がりになっています。こうした味わいの違いは「土壌」と「樹齢」によるもの。そしてどのワインも"エレガント"な仕上がりになっていて、ピエロ氏が追い求めた味わいが、自然な造りを通して体現されているのがわかります。
↑左から『バルダ』『シン・アズブレ』『チャクラ55 シンクエンタ・イ・シンコ』『チャクラ32 トレインタ・イ・ドス』『チャクラ・シャルドネ』『マイケ・シャルドネ』
■パタゴニアで生まれるユニークなコラボレーション
実は「ボデガ・チャクラ」は、ブルゴーニュ・ムルソーの偉大な生産者であるジャン・マルク・ルーロ氏と共同経営で白ワイン造りも行っています。
フランス語が堪能だというピエロ氏は、生産者の食事会で通訳もする機会が多く、繋がりも増えていきました。あるとき、ブルゴーニュの生産者とのディナー会で「パタゴニアの地がシャブリと似ている。シャルドネを作ってみても面白いのでは?」と冗談めかしてシャブリの生産者と話していたところルーロ氏が「私は誘ってくれないのか?私もパタゴニアに行ってみたい」と興味を持ったことがきっかけとなり、実現したそうです。当初、白ワインを造る想定ではなかったピエロ氏。ファミリーも赤ワインばかり造っていたこともあり、醸造についてはルーロ氏に任せ、共同経営という形を取り、ワイン造りを行っています。イタリアの名門ワイナリー出身のピエロ氏とブルゴーニュの偉大な生産者ルーロ氏がコラボレーションしパタゴニアで造るワインという非常にユニークなコンセプトは、「ボデガ・チャクラ」を知るうえでぜひ注目していただきたいポイントです。
↑ジャン・マルク・ルーロ氏と共同経営で造られる白ワイン『マイケ・シャルドネ』
「このボデガ・チャクラは36名のチームでワイン造りを行っています。自然の力を利用した造り方は、コストや手間がかかりパッションがないと成り立たない仕事です。日本にも私と同じ思いを持って農業に取り組んでいる方がいると思います。私の考えに共感していただけたなら、そういった生産者を応援してもらえると嬉しいです。その想いが次世代へ繋がっていくことが私の望みです」と最後に語りました。
↑ワインショップ・エノテカ 池袋東武店で開催されたイベントで熱く語るピエロ氏
理想の味わいを求めながら、そして次世代の農業へも目を向けた彼らの想いをぜひワインを通してご堪能ください。