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サン・テミリオン&ソーテルヌの名門シャトーの会長が来日!シャトーの真髄に迫る
世界中のワインラヴァーを虜にする、サン・テミリオンのトップシャトーのひとつ、「シャトー・シュヴァル・ブラン」と、ソーテルヌの格付けで唯一、最高位プルミエ・クリュ・シュペリュール(特一級)にランクされる「シャトー・ディケム」。ボルドーを代表する二つのシャトーで会長を務めるピエール・リュルトン氏が来日し、ワインショップ・エノテカで特別イベントを行いました。
テイスティングと彼のスピーチから、シャトーの真髄に迫る貴重な機会となりました。その内容をレポートします。
↑「シャトー・シュヴァル・ブラン」、「シャトー・ディケム」の会長ピエール・リュルトン氏
■テロワールの個性を表すことが最も大切
↑「シュヴァル・ブラン」での収穫の様子
ピエール・リュルトン氏は1991年よりサン・テミリオンの名門「シャトー・シュヴァル・ブラン」に携わり、2004年からはソーテルヌの最高峰「シャトー・ディケム」も統括しています。ボルドーを代表する名門ワイナリーの会長として、長年の経験に裏打ちされたワイン哲学を語りました。
サン・テミリオンにありながら、ポムロルの境界線上に位置するシュヴァル・ブラン。この立地こそがシャトーの個性を生み出す鍵だとリュルトン氏は明かします。
「『シュヴァル・ブラン』のテロワールの面白さは、土壌の多様性にあります。"モザイク"のような土壌で、粘土石灰質と砂利質が複雑に入り混じっているのです。近くにはメルロ主体のペトリュスがありますが、『シュヴァル・ブラン』はメルロとカベルネ・フランのブレンド。カベルネ・フランは熟成中にメルロのポテンシャルを引き出す重要な存在です。年によってメルロ優位にするか、カベルネ・フランを強調するかを調整しますが、スタイルは常に一貫しています。サン・テミリオンでありながら、どこかポムロル的な要素を感じさせるのです。」
メルロとカベルネ・フランの絶妙なバランスが生むワインは、エレガンスと力強さを兼ね備え、長期熟成にも耐える構造を持ちます。なめらかで繊細な口当たり、複雑で深みのある香りと味わいが「シュヴァル・ブラン」の真骨頂といえるでしょう。
イベントでは、ヴィンテージ違いのシュヴァル・ブランが供され、それぞれの個性を堪能することができました。共通しているのは「カシミヤのようになめらかなタンニン」とリュルトン氏が語るエレガントさです。それぞれのヴィンテージの特徴をお話いただきました。
2022年:とても暑い年でしたが、驚くほどフレッシュさを保つことができました。黒系果実と花のような香り、そしてカシミヤのようにしなやかな口当たりが特徴です。カベルネ・ソーヴィニヨンを1%だけ加えていますが、これは料理の最後にひと振りする黒胡椒のような存在です。
2018年:病害に苦しんだ年でしたが、9〜10月の天候に救われ、果実が見事に完熟しました。スパイスやカカオのニュアンスを持ち、しっかりとした骨格とフレッシュさのバランスが取れています。私は常に"果実のフレッシュネス"を大切にしていて、醸造チームにも「アルデンテのパスタのようにフレッシュであること」を伝えています。
2011年:とてもクラシックなスタイルの年です。丸みのある味わいと熟成からくる深みがあり、まさに"VERY VERY CHEVAL BLANC"と呼びたいヴィンテージです。すでに14年経っていますが、まだまだ進化を続けるポテンシャルを感じます。
■ディケムは決してデザートワインではない

一方で、リュルトン氏がもうひとつ会長を務めるのが「シャトー・ディケム」。極甘口の貴腐ワインとして知られ、"デザートワイン"と呼ばれることもありますが、リュルトン氏は語気を強めて言いました。「ディケムは決してデザートワインではない」と。
「糖度ばかりに注目するのではなく、いかにフレッシュさや酸を残すかを大切にしています。そうすることで、食事との相性も生まれるのです。あるパーティーで1985年のポンテ・カネを出す際、ディケムをデザートワインとして出したいと言われたことがありました。私は『それなら、最初の前菜で出してほしい』とお願いしたんです。前菜はロブスターのサフランソース。『熟成ボルドーの前に甘口ワインなんて合わない!』と言われましたが、私は合うと確信していました。結果、納得してもらえたんです。私は『ディケム』を、前菜から合わせることができるワインだと考えています。」
実際にその日の夜のディナーでは「シャトー・ディケム2021」を、牡蠣を使用した前菜に合わせました。微かに火をいれた牡蠣と、牡蠣から出る海水のジュレは、潮の風味、ヨード香がしっかりと素材の中に残っており、ディケムの複雑な甘みと酸が混然一体となったマリアージュでした。また、メインでは「シャトー・ディケム1990」を鴨のロティにも合わせる試みに挑戦!カラメリゼされた香ばしい鴨の皮、そして付け合わせの洋ナシとフランス産ブルーチーズ(フルム・ダンベール)のタルトが、ディケムと鴨肉のペアリングを引き立てており、その組み合わせにリュルトン氏も絶賛されていました。ディケムの楽しみ方の可能性の幅を再確認できた機会になりました。
このように貴腐ワインの最高峰である「ディケム」は、食後にチーズやデザートと合わせるだけの存在ではありません。食中にこそ、その奥深い魅力が発揮されるのです。
イベントの最後には、リュルトン氏がこう締めくくりました。
「『ディケム』をさまざまなシーンで楽しんでほしいと思います。フランス語でいう『Art de vivre(アール・ド・ヴィーヴル)』。日々の暮らしの中にある美しさや豊かさと『ディケム』が繋がればと思います。自然の中でも、食事とともに味わってもいい。どんな場面でも寄り添い、永遠に楽しめる存在でありたい。それが『ディケム』です。そして、そんなワインをこの場で皆さんにご紹介できたことを、非常に嬉しく思います。」
■シャトー・シュヴァル・ブラン https://www.enoteca.co.jp/producer/detail/296