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ヤラ・ヴァレーを代表する4生産者が来日! "Creative Freedom"を体現した個性溢れるハイクオリティワインを披露
ヤラ・ヴァレー(オーストラリア)を代表する4人の生産者が合同来日。冷涼な気候を背景に高品質なワインを生み出す銘醸地ヤラ・ヴァレーについて、また、生産者ごとに異なる個性を持ったワインについて語っていただきました。
↑左から「ジャイアント・ステップス」より醸造・栽培長のメラニー・チェスター氏、「イエリング・バーグ」よりオーナーのサンドラ・ド・ピュリー氏、「メイヤー」よりオーナーのティモ・メイヤー氏、「ヤラ・イエリング」よりワインメーカーのサラ・クロウ氏。
■ オーストラリアワインのイメージを覆す、ヤラ・ヴァレーのワイン
ヤラ・ヴァレーはオーストラリア・メルボルンから約60kmの距離にある、南東部のヴィクトリア州を代表するワイン産地。ヴィクトリア州で最初にワイン用のブドウが植えられた地域として知られており、冷涼な気候からオーストラリアの中でも高品質のピノ・ノワールや、上品で熟成ポテンシャルの高いシャルドネを生み出しています。しっかりとしたボディのオーストラリアワインのイメージを覆す、エレガントなスタイルのワインが多く造られており、その上質さを生み出す土壌や風土と合わせて、近年さらに評価が高まっている注目の産地です。
今回、4人の生産者の方々へ、「自身のワイナリーを一言を表すと何でしょうか?」という質問をしたところ、四者四様の回答が返ってきました。
■ ジャイアント・ステップス=「Single Vineyard(単一畑)」
1998年創立のジャイアント・ステップスは、冷涼な気候のヤラ・ヴァレーにおいて、単一畑の高品質なピノ・ノワール、シャルドネを手がけるワイナリーです。
ワイナリー名は、モダンジャズのサックス奏者ジョン・コルトレーン氏が1960年にリリースしたアルバム「ジャイアント・ステップス」に由来。コルトレーン氏が自己のスタイルに安住することなく常に前進、新境地を開き続けた生き様が、ワイナリー創設者であるフィル・セクストン氏の「時代の先を行く存在になる」というビジョンを完璧に表現しているとして名付けられました。
↑テイスティングイベントで供された「ジャイアント・ステップス」のワイン。左からヤラ・ヴァレー シャルドネ2024、ヤラ・ヴァレー ピノ・ノワール2024、アップルジャック・ヴィンヤード・ピノ・ノワール2024。
ワイナリーの特徴を一言で表すと「Single Vineyard(単一畑)」である、とメラニー氏。
「それぞれの畑の個性を際立たせることが、ブドウやワインのクオリティ向上に繋がる」という考えの下に、ブドウの栽培とワインの醸造を行っています。ブドウ栽培が行われている5つの区画の畑はそれぞれ標高100~400mに位置し、その標高差や場所による土質、日当たりの違いが、造られるワインに異なる個性を与えています。
栽培においては、全ての畑においてサステナブル農法を実施。収穫は手摘み、選果も手作業で行っています。醸造では、プレスは時間をかけてゆっくりと行われ、それぞれの畑由来の土着の酵母を使用して発酵。添加物は最小限に抑えており、ボトリングまでの工程では、重力を利用したグラヴィティーシステムを採用しています。
このように、ジャイアント・ステップスでは冷涼なヤラ・ヴァレーのテロワールとブドウの個性を活かした醸造方法で、ブルゴーニュにも匹敵するハイクオリティでエレガントなスタイルのワインを造っています。
↑テイスティングイベントにて「ジャイアント・ステップス」の解説をするメラニー氏
■ メイヤー=「Farmer(農家・農民)」
メイヤーは、ドイツで400年以上ワイン造りに携わってきたメイヤー家出身であるティモ・メイヤー氏が、自身の名を冠して1999年に創設したワイナリーです。「昔ながらのワイン造りに立ち返ることが、良いワインを造ることに繋がる」というティモ氏の考えのもと、人の手を極力加えないナチュラルなワインメイキングを実践しています。
↑テイスティングイベントで供された「メイヤー」のワイン。左からメイヤー・シャルドネ2024、メイヤー・クローズ・プランテッド・ピノ・ノワール2024、メイヤー・ドクトル・ピノ・ノワール2024。
ワイナリーの特徴を一言で表すと「Farmer(農家・農民)」である、とティモ氏。
「畑で良いブドウを栽培し、そのブドウで良いワインを造ることを大切に心がけています」と話すティモ氏は、冷涼な気候のヤラ・ヴァレーで育つブドウのポテンシャルを最大限に引き出すために、人為的介入を極少に留めることにこだわってブドウを栽培しています。また、2004年に当時は古い技術だと思われていた全房発酵をピノ・ノワールで導入し、現在はガメイやテンプラ二ーリョなど含めた全てのキュヴェで全房発酵を実施。ボトリングは無濾過で行っています。
このようにメイヤーでは、徹底した非介入主義のもと、ヤラ・ヴァレーの冷涼なテロワールを反映しながらよりピュアでエレガントなスタイルのワインが造られています。
↑テイスティングイベントにて「メイヤー」の解説をするティモ氏
■ ヤラ・イエリング=「Reliable(信頼性)」
ヤラ・イエリングは、1969年に植物学者であったベイリー・カラドス氏が12haの畑を購入したことから始まったワイナリーです。2008年にカラドス氏が亡くなった後は長年親交のあった2人の友人に経営権が託され、その後2013年サラ・クロウ氏がワインメーカーに就任。現オーナーと彼女は、カラドス氏の独自の理論に基づいたブドウ栽培や醸造を実践し、その遺志を引き継いでいます。
ワインメーカーとしての才覚に溢れ、輝かしい受賞実績なども持つサラ氏は、それまでの経験で培ってきた技術をヤラ・イエリングのワインメイキングにも積極的に導入。絶えず変化し続けている気候環境やワインの流行を見逃さず、常に新しいことにチャレンジする姿勢でワイン造りに取り組んでいます。
↑テイスティングイベントで供された「ヤラ・イエリング」のワイン。左からアンダーヒル2018、ドライ・レッド・ワイン・ナンバー1 2019、ドライ・レッド・ワイン・ナンバー2 2020。
ワイナリーの特徴を一言で表すと「Reliable(信頼性)」である、とサラ氏。
「歴史と伝統のあるヤラ・イエリングのワインは、皆様から信頼を寄せていただいている。私たちはその信頼を裏切らない高品質なワイン造りで、さらにその期待を超えることを目標としています」
サラ氏は栽培において、ブドウに凝縮感のある豊かな味わいを持たせるため、2,500~5,000kg/1haと低収量を徹底。ブドウ樹は3m間隔で植えられていますが、列内の間隔はブドウの品種や土壌の種類への適合性によって変えるなど、独自の理論に基づいた手法を用いています
また、ワイン発酵には発酵槽「ティー・チェスト」を採用するワインも一部あり、この発酵槽は木製樽にステンレスの内張りをしたつくりで、ブドウを発酵させる際に収まる適切な量を保持するためにカラドス氏によって開発、伝統的に使用されてきました。
このように伝統と最新技術の融合から生まれるヤラ・イエリングのワインは、フレッシュで豊かな果実の風味が魅力で、若いうちから楽しめて熟成のポテンシャルも持ち合わせる逸品です。
↑テイスティングイベントにて「ヤラ・イエリング」の解説をするサラ氏
■ イエリングバーグ=「History(歴史)」
イエリングバーグは、1863年創業時から同一ファミリーによる経営を続けているとして、ヤラ・ヴァレーでは最長の歴史を誇るワイナリーです。「後世に続く持続可能な営み」を指針とし、牧畜業とあわせた総合的な取り組みを実践。ブドウ栽培以外にも羊や牛の飼育を行っています。
ワイン造りにおける最大の特徴は、自社畑のブドウのみを使用することで、品質管理の徹底に重点を置き、自ら栽培したブドウのみからワインを造っています。また、品質保持のために収量は1haあたり3~8tに抑えており、剪定や収穫は全て手作業で行っています。
醸造においては、「バランスのとれたエレガントなワイン」を標榜し、使用する樽はフレンチオークのみ。若くても楽しめて、長期熟成のポテンシャルも兼ね備えたワインが生み出されています。
↑テイスティングイベントで供された「イエリング・バーグ」のワイン。左からイエリングバーグ・ヴィオニエ2023、イエリングバーグ・シラーズ 2022、イエリングバーグ 2022。
ワイナリーの特徴を一言で表すと「History(歴史)」である、とサンドラ氏。
今でこそ高品質なワインを生み出す銘醸地と名高いヤラ・ヴァレーですが、その歴史はけして平坦なものではありませんでした。1880年代にイエリングバーグを始めとする同地のワイナリーの国際的な名声が高まったことを契機に盛り上がりを見せたヤラ・ヴァレーのワイン産業でしたが、20世紀初頭になると不況やテーブルワインの需要縮小によって衰退。
イエリングバーグも1921年にワイン造りを一時停止させました。しかし1969年に3代目のギル氏が、約100年前に創業者である祖父が選んだ畑にブドウを再植樹することでリスタートを切ります。
そして現在、創業160年以上を誇るイエリングバーグは、ワイナリーの歴史がヤラ・ヴァレーという産地の歴史と言えるほどの老舗ワイナリーとなりました。評価誌『ハリデー・ワイン・コンパニオン(2023年)』においても「ヤラ・ヴァレーの老舗であり、最も重要なワイナリーのひとつとして、この上なく楽しみなワイナリー」と高い評価を得ています。
↑テイスティングイベントにて「イエリングバーグ」の解説をするサンドラ氏
■ 伝統と革新、自由な探求心に満ち溢れた生産地
今や世界でも指折りの上質なワインを生み出す銘醸地として知られるヤラ・ヴァレー。各生産者で共通しているのは、ヤラ・ヴァレーという土地のテロワールを表現したエレガンスなワインであるということ。しかしそれぞれのワイン造りやワイナリーの歴史を紐解いていくと、個々の自由なこだわりと哲学(=Creative Freedom)が垣間見えます。
高品質でありながら生産者ごとの個性が表されたワインを生み出すヤラ・ヴァレーに、今後ますます注目です。
■ジャイアント・ステップス https://www.enoteca.co.jp/producer/detail/1614
■メイヤー https://www.enoteca.co.jp/producer/detail/1263