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2025. 06. 30
生産者来日

「イル・ボッロ」から最高責任者サルヴァトーレ・フェラガモ氏が来日! ヴァルダルノ・ディ・ソプラの可能性と進化する味わいを紐解く

 イタリア・トスカーナの地でフェラガモ ファミリーが手がけるワイナリー「イル・ボッロ」より、3代目で最高責任者のサルヴァトーレ・フェラガモ氏と、その息子で今回初来日となるマッシモ・フェラガモ氏が来日。「イル・ボッロ」が位置するヴァルダルノ・ディ・ソプラの可能性と、ますますエレガントな味わいに進化する「イル・ボッロ」のワインについて説明いただきました。

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↑今回初来日となる息子のマッシモ・フェラガモ氏(左)と最高責任者のサルヴァトーレ・フェラガモ氏。

 1993年、2代目のフェルッチオ・フェラガモ氏がトスカーナの中心、アルノ渓谷に位置する千年ほどの歴史がある中世の村も含めた420haの土地を購入、1999年に創業したのがワイナリー「イル・ボッロ」です。イタリアの高級ブランド「サルヴァトーレ」を手がけることで有名なフェラガモ ファミリーですが、彼らが誇るモノづくりと同様、ワイン造りにも非常に力を入れており、高品質なワインを生み出しています。今回の来日にあたって、ヴァルダルノ・ディ・ソプラに位置する「イル・ボッロ」が持つ"多彩な土壌"という特長と、ワイナリーと同名を冠するフラッグシップワイン『イル・ボッロ』の味わいの進化について、サルヴァトーレ氏が詳しく語ってくれました。

■古い歴史がありながら、現代的なD.O.C.ヴァルダルノ・ディ・ソプラ

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↑アルノ川を挟んで、左右に広がるヴァルダルノ・ディ・ソプラD.O.C.。「イル・ボッロ」が位置するのは、アレッツォ近く、アルノ川上流右岸(上記地図で右上の方)。

 1716年、トスカーナ大公コジモ3世が世界で初めて制定した定めた銘醸地のひとつ、ヴァルダルノ・ディ・ソプラに位置する「イル・ボッロ」(それ以外の呼称はキャンティ中心地、カルミニャーノ、ポミーノ)。その後、キャンティエリアに取り込まれるなどして、ヴァルダルノ・ディ・ソプラの呼称は忘れられていましたが、近年、「イル・ボッロ」を含めた20生産者ほどが集まってこのD.O.C.を再興させようということになり、2011年、ついにD.O.C.として復活を果たしました。

 ヴァルダルノ・ディ・ソプラD.O.C.はオーガニック認証を義務付けているイタリアで初めてのD.O.C.となります。これは「イル・ボッロ」ほか、再興を試みた生産者たちの働きかけによって初めて実現しました。また、ラベルにはサブエリアなどの地理的言及ではなく、単一畑の名前を記載することができます。また、樽熟成やスティルワインのみといった規定がないため、そうした規定がないことを活かす形で、「イル・ボッロ」では『ペトルーナ』でアンフォラ(赤土で造った素焼きの壷)での熟成、『ポリッセナ』でサンジョヴェーゼをフレンチオーク樽で発酵など、さまざまな手法を実践しています。ちなみにミュージシャンのスティングが所有するワイナリーも新たにヴァルダルノ・ディ・ソプラD.0.C.のワインを造るそうで、このエリアは今かなり注目されているのだそうです。

■「イル・ボッロ」の土壌の多様性が育む様々なブドウ品種

 フラッグシップワインの『イル・ボッロ』はメルロやカベルネ・ソーヴィニヨンなどから造られており、イタリアと言えば土着品種の人気があるのに、なぜ『イル・ボッロ』は国際品種から造られているのか、その理由をサルヴァトーレ氏が話してくれました。

 現在では1,200haにも及ぶ「イル・ボッロ」の敷地ですが、そのうちブドウ畑の面積は85haにも及び、ヴァルダルノ・ディ・ソプラの4つのエリアにまたがっています。寒暖差を生みだすプラトマーニョ山脈の麓、標高350~500mの間に広がっており、日中は暑くなりますが、夜は涼しく、その寒暖差がブドウに良い影響を与えています。北側はアペニン山脈の麓からアルノ川へと下る斜面で、山脈に近いエリアではサンジョヴェーゼを、そこから下った砂利を多く含む土壌ではシラー、その下の砂質土壌ではカベルネ・ソーヴィニヨン、さらに下った粘土質土壌のエリアではメルロを栽培しています。こうした多種な土壌ごとに、それぞれに適したブドウを育てていることが、「イル・ボッロ」の特徴的なポートフォリオの源泉となっていま す。」

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↑エリアによって土壌がまったく異なるのが見てとれる。左)標高の高い場所に広がる、エレガントなサンジョヴェーゼを生み出す岩混じりの土壌。上中)メルロに最適な粘土質土壌。右)石が混じる砂質土壌ではシラーやカベルネ・ソーヴィニヨンが造られる。

■エレガントに進化するフラッグシップワイン、『イル・ボッロ』

 「イル・ボッロ」には2つの柱があり、それは"テロワール"と"サステナビリティ"です。これらに従ってワイン造りを行っている、とサルヴァトーレ氏は語ります。

「「イル・ボッロ」はとても自然豊かでウサギやイノシシも走り回っているんですよ(笑)。

2012年からオーガニック農法を開始し、2015年に認証を取得しました(一部ビオディナミ農法を導入)。「イル・ボッロ」は完全循環型のオーガニック農法が特長です。ブドウ畑だけを管理するのではなく、鶏や牛、馬などの動物を飼育し、動物たちの排泄物を活用したたい肥をブドウ畑に使用、ソーラーパネルで電力を生産して村内で利用するだけでなく、村外にも供給しているほどの発電量を誇ります。敷地内の植物によって年間13,860トンものCO2を吸収しているほか、雨水を回収し、循環をさせています」

とサルヴァトーレ氏が語るように、「イル・ボッロ」におけるサステナビリティの取り組みは徹底しています。

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↑雑草が生い茂る「イル・ボッロ」のブドウ畑。オーガニック栽培とビオディナミ栽培を行っている。

 そして、近年特にエレガントな味わいへと進化が見られるフラッグシップワイン『イル・ボッロ』について、その変化の理由を教えてくれました。

「エレガントになっているのには、以下の理由が挙げられます。ひとつは光学選果台を2014年から導入し、本当に完熟したブドウのみ使用できるようになったことが、『イル・ボッロ』の味わいに寄与しています。そして、熟成の工程でも変化がありました。当初、『イル・ボッロ』はすべて新樽を使って熟成していましたが、2018年から大樽を導入し、果実味と樽の風味のバランスを考えたワインに変化しています。」

 加えて、基本的にグラヴィティフローを導入しており、できるだけブドウにストレスをかけないようワイン造りを行っています。畑ではオーガニックな取り組みで伝統回帰しているのに加え、最新技術や新しい取り組みも行っており、こうした積み重ねが今の『イル・ボッロ』に表現される、バランスの良さとエレガントさを生み出しているのです。

 ラグジュアリーブランド同様、ワイン造りにおいても品質至上主義を誇る『イル・ボッロ』。手がけるワインは、米国のイータリー、カナダ・バンクーバーのフェアモント ホテル、カリフォルニアのチプリアーニなど、名だたるショップやレストランでも採用されており、世界的に高評価を得ています。

 最後に『イル・ボッロ』以外のワインについて、サルヴァトーレ氏がお気に入りと、おすすめの楽しみ方を教えてくれました。

「私のお気に入りはシラーとサンジョヴェーゼから造られる『ピアン・ディ・ノヴァ』で毎日飲んでいます。『ペトルーナ』と『ポリッセナ』はどちらもサンジョヴェーゼから造られるワインですが、『ペトルーナ』はアンフォラ、『ポリッセナ』はオーク樽とステンレスタンクを使用と熟成方法が違うだけなので、ぜひ飲み比べて楽しんでみてください。」

 ヴァルダルノ・ディ・ソプラの地で、そのテロワールを忠実に反映することから生まれる、「イル・ボッロ」の多彩なワインの数々。その魅力的なラインナップと進化する味わいは、フェラガモ ファミリーならではのワイン造りへの飽くなきこだわりと、自然豊かなヴァルダルノ・ディ・ソプラという土地の空気までも見せてくれます。