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2025. 06. 19
生産者来日

「ポッジョ・ディ・ソット」のワインメーカーが語る── 『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』に映すヴィンテージの魅力

 イタリア・モンタルチーノの名門「ポッジョ・ディ・ソット」。権威あるワインガイド誌『ガンベロ・ロッソ』の最高評価を幾度も獲得し、透明感とエレガンスを湛える『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』で愛好家を魅了し続けています。

 このたび、エクスポート・ディレクターの マーテン・リーレヴェルト氏とワインメーカーのレオナルド・ベルティ氏が来日。ワイナリーの哲学や土地の個性、未来への展望について語ってくれました。

歴史を受け継ぎ、進化を続けるワイナリー

「ポッジョ・ディ・ソット」は1989年、ワイン愛好家のピエロ・パルムッチ氏(2022年に逝去)によって創業されました。パルムッチ氏は運送業としてのキャリアを経た後、ワイン造りに人生を捧げ、"サンジョヴェーゼの真髄を表現するワイン"を追求してきました。

 創業時からパルムッチ氏が信頼を寄せたのが、"サンジョヴェーゼのマエストロ"としてその名を馳せていたジュリオ・ガンベッリ氏。「カーゼ・バッセ・ジャンフランコ・ディ・ソルデラ」などイタリア屈指の銘醸ワインを手がけており、ブルゴーニュのアンリ・ジャイエ氏、イタリアのジャコモ・タキス氏に並び称される伝説的な醸造家です。

 「ジュリオ・ガンベッリ氏は、サンジョヴェーゼという品種の本質を感覚的に理解していた唯一無二の存在でした」とベルティ氏は語ります。ガンベッリ氏とパルムッチ氏は、共に畑の選定・栽培法・醸造の哲学まで、一から理想のワイン造りを築き上げ、その品質は世界的に評価されただけでなく、漫画『神の雫』にも2005年ヴィンテージが登場するなど、広く知られる存在となりました。

 2011年からはイタリアの名門ワインファミリー、コッレ・マッサーリグループの傘下に入り、その哲学は今なお一貫して受け継がれています。「オーナーが変わってもワインのスタイルは変わっていません。それこそが最も重要なことです」とリーレヴェルト氏は語ります。

 現在はガンベッリ氏の右腕として活躍したフェデリコ・スタデリーニ氏によるコンサルティングのもと、レオナルド・ベルティ氏がワインメーカーを務め、「畑の魂をワインに込める」哲学を今も継承しています。

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↑今回来日したワインメーカーのレオナルド・ベルティ氏(左)、エクスポート・ディレクターのマーテン・リーレヴェルト氏

■多彩なテロワール

 「ポッジョ・ディ・ソット」が位置するのは、モンタルチーノ南東部、カステルヌオーヴォ・デッラバーテ地区の丘陵地帯。20haの畑は南、もしくは南西向きに広がり、標高470mから170mまで約300mの標高差が存在します。

 標高約1,700mのアミアータ山から吹き下ろす冷涼な風が畑に冷気をもたらし、夏場の過度な熱を和らげ、夜間の寒暖差がブドウの香りを引き出し、酸を引き締めます。さらに、すぐ近くを流れるオルチャ川が空気の流れを促し、湿気がこもらない環境を作り出しています。こうした自然環境のおかげでブドウが病気になりにくく、創業以来一度も途切れることなくオーガニック栽培を続けているそうです。

 土壌の構成も区画ごとに異なります。標高の低いエリアでは粘土質にガレストロ(石灰質を含む礫)が混じり、そうした土壌から作られるブドウはワインにエレガンスと繊細さを与えます。一方、標高が上がるにつれて、鉄分を豊富に含む赤い砂粘土質の土壌が現れ、その土壌からは骨格のしっかりとしたストラクチャーが生み出されます。

 「この土地の持つ自然の多様性こそが、「ポッジョ・ディ・ソット」のワインに奥行きと複雑さを与えているのです」とベルティ氏は誇らしげに語ってくれました。

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↑標高によって土壌が異なる「ポッジョ・ディ・ソット」の畑。左は標高の低いエリア(約170~300m)の砂利と粘土からなる岩質の土壌で、右は標高の高いエリア(約450m)の砂粘土質土壌

■個性の源泉は、182種ものサンジョヴェーゼのバイオタイプ※1

1:サンジョヴェーゼの遺伝的な亜種や変異型。房の形や葉の色などの違いがワインの表現に影響する。

 「ポッジョ・ディ・ソット」のワインが放つ、類まれな奥行きと複雑さ。その背景にあるのが、世界でも稀有なサンジョヴェーゼの"生きたアーカイブ"とも呼べる畑の存在です。

 「ポッジョ・ディ・ソット」の畑は、モンタルチーノでも数少ない4050年前から続く歴史ある区画を擁し、その区画には他に類を見ないバイオタイプの多様性があるのだそうです。フィレンツェ大学との協力で研究を行った結果、この畑に自生するサンジョヴェーゼは約182種類ものバイオタイプに分類されました。葉の色や房の形、熟成のスピードなど微妙な違いがブドウの個性に反映され、それらがワインの奥行きと複雑な味わいに繋がっているのだそうです。

 「選抜して一部だけ使うのではなく、すべてのバイオタイプを活かしています。これはサンジョヴェーゼの"生物多様性"そのもの。「ポッジョ・ディ・ソット」ならではのアロマや味わいは、ここから生まれているのです。」

 つまり、畑そのものが何世紀にもわたる自然淘汰と適応の歴史を内包した、"生きた植物学的アーカイブ"なのだとか。「182のバイオタイプを未来にも継承していく。それは私たちの大きな使命のひとつです」と力強く語っていました。

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↑「ポッジョ・ディ・ソット」の畑のサンジョヴェーゼ

■哲学は、ヴィンテージの個性を映し出すために

 「ポッジョ・ディ・ソット」の哲学は、ヴィンテージの個性を最大限に映し出すことにあります。

 そのため、すべてのサンジョヴェーゼは収穫後、区画ごとに分けて醸造されます。2年間の木樽熟成を経たのち、まずは各樽のテイスティングを実施し、その個性を見極めたうえで『ロッソ・ディ・モンタルチーノ』または『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』としてリリースするかが決められます。

 そして『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』に選ばれたワインは、さらに1年間の追加樽熟成を経て再度テイスティングが行われ、『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・リゼルヴァ』にすべき樽があるかが判断されるのです。

 「リゼルヴァは毎回同じ区画から選ばれるわけではありません。年ごとの個性に最もふさわしいものを選びます」とベルティ氏は説明します。1112樽をチーム4人でブラインドテイスティングし、その年の個性が際立つひと樽をリゼルヴァに選出するのだそうです。

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↑テイスティングするワインメーカーのレオナルド・ベルティ氏(POGGIO DI SOTTO公式Metaより)

 例えば、冷涼な2018年にはエレガントで繊細な個性が、暖かく果実の凝縮した2019年には骨格のある力強い個性が、それぞれリゼルヴァのスタイルとして表現されました。こうして『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ リゼルヴァ』は、ヴィンテージの個性を最も豊かに映し出すスタイルで仕上げられているのです。

 「ロッソはヴィンテージの個性に触れるスタイル、ブルネッロはその年の表情を映し出すスタイル、リゼルヴァはヴィンテージの個性を最大限に豊かに表現するスタイルと、それぞれのワインによって目指すスタイルを変えています」とベルティ氏。

 「選抜したクローンや区画だけを使う」のではなく、「その年の自然が生んだものすべてにチャンスを与え、その中から最良の表現を選び取る」という哲学こそが、「ポッジョ・ディ・ソット」のワインの魅力を支えているのです。

2019──過去数十年で最高のヴィンテージ

 現在販売している20192ヴィンテージは、「過去数十年で最高の年のひとつ」と多くの評論家が絶賛するグレートヴィンテージ。「ポッジョ・ディ・ソット」の『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』にも、この年の圧倒的な品質と熟成ポテンシャルが見事に映し出されています。

 「2019年は果実の凝縮感と骨格が非常に素晴らしい年。私たちのワインでは、赤系果実のピュアな香りと、深みのあるテクスチャー、余韻の長さが際立っています。2530年の熟成にしっかりと耐える、非常に長いエイジングポテンシャルもあります。」とベルティ氏は自信をのぞかせました。

220256月現在、販売している「ポッジョ・ディ・ソット」の2019年ヴィンテージは『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』のみ。『リゼルヴァ』は2025年秋発売予定(事情により変更になる場合がございます)

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 「畑の個性とバランス、そして、その年ごとの魅力をワインに込めて表現すること──それこそが「ポッジョ・ディ・ソット」の揺るぎない哲学です」

「ポッジョ・ディ・ソット」はこれからも、その哲学に忠実なワイン造りを続けていくことでしょう。

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■ポッジョ・ディ・ソット
https://www.enoteca.co.jp/producer/detail/129