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「ドメーヌ・デュ・コント・リジェ・ベレール」が2年ぶりの来日! オーナーが語る「ラ・ロマネ」とは
世界一有名かつ高価なワインを生み出すフランス・ブルゴーニュの特級畑、ロマネ・コンティが存在する村、ヴォーヌ・ロマネ。そのヴォーヌ・ロマネに本拠地を構え、ロマネ・コンティと肩を並べるグラン・クリュ「ラ・ロマネ」を所有するのが、「ドメーヌ・デュ・コント・リジェ・ベレール」です。由緒正しき貴族の家系であり、今やブルゴーニュで特に注目される生産者の一つです。
■貴族からヴィニュロンへ
↑オーナーのルイ・ミッシェル・リジェ・ベレール氏
リジェ・ベレール家は、ナポレオン軍にも仕えた歴史を持つ名門貴族です。1815年、ナポレオン政権下の将軍であった初代ルイ・リジェ・ベレール氏がドメーヌを設立し、当時はラ・ターシュやラ・グラン・リュ、シャンベルタン等、約60haを所有する大ドメーヌでした。しかし、1933年に相続や家族の事情で所有する畑のほとんどを手放すことに。一部の畑は手元に残ったものの、ブドウの栽培、醸造や瓶詰めはすべてネゴシアンに委託してきました。
しかし、現在7代目当主を務めるルイ・ミシェル・リジェ・ベレール氏は軍人になる道を選ばず、ヴィニュロン(ブドウ農家)となり、ワイン生産者という道を歩み始めたのです。
その決意は、驚くべきことにわずか8歳のときに芽生えたといいます。幼きルイ・ミシェル少年は、「将来はヴォーヌ・ロマネでヴィニュロンになる」と家族に宣言しました。夢は言葉だけにとどまらず、やがて現実に。農業エンジニアの資格を取得し、ディジョン大学では醸造学を学び、ビジネスのディプロマも取得。理論と実践の両輪を備えた造り手として、自らの土地に戻ってきたのです。
今回、そのルイ・ミシェル氏が2年ぶりに来日。「ラ・ロマネ」の魅力、そして彼にとって大きな存在であった故アンリ・ジャイエ氏との思い出について語ってくれました。
■「ラ・ロマネ」は、交響曲のように美しい
リジェ・べレールを語る上で欠かせないのが『ラ・ロマネ グラン・クリュ』です。彼らが単独所有する僅か0.85haのその畑は、東はロマネ・コンティ、北はリシュブールとグラン・クリュが隣接しており、ロマネ・コンティに並ぶブルゴーニュの最高位と称されています。
「ラ・ロマネがグラン・クリュである理由は?と聞かれることがよくあります。私の答えは、やはり土壌です」
この地は典型的な半大陸性気候に属し、夏は暑く冬は寒いのが特徴です。土壌は粘土と泥灰岩を含む石灰岩で構成されており、その絶妙なバランスこそが、ワインに奥深い構造と気品をもたらすのだそうです。特にラ・ロマネの土壌は石の大きさがほぼ均等であることから、水はけが良く、根が深く伸びやすいという特性があります。
畑の地質的特徴
西側 :赤褐色の表土が、プレモー石灰岩層の上に広がっており、ベージュピンク色の緻密な石灰岩が薄く地殻を形成している。
南西角:シリカの塊である「シャイユ」という石が点在しており、火打ち石のような性質を持つ。
東側 :深い粘土質の石灰岩層の上にあり、プレート状の構造をしている。
「グラン・クリュのワインは、まるでクラシック音楽の交響曲のようです。複雑に重なり合う要素が、美しいハーモニーを奏でます」と語るルイ・ミシェル氏は、自身を畑を導く指揮者に例えます。
「ヴァイオリンの繊細な響きを、指揮者が正確に捉えるように、私は畑の細部を誰よりも理解し、その瞬間における最良の栽培、醸造、熟成に反映させていきます」
■師・アンリ・ジャイエから受け継いだ哲学
ルイ・ミシェル氏が自らワイン造りを始めた当初、最も影響を受けたのが"ピノ・ノワールの神様"と称される故アンリ・ジャイエ氏(2008年逝去)でした。
「父の友人であったアンリ・ジャイエ氏には、たくさんのことを教わりました。畑にブドウが実ったときには、一緒にそのブドウを食べ、出来上がったワインを一緒に飲み、その時々でアドバイスをくれました。彼は、ワイン造りの技術ではなく、ワイン造りへの向き合い方、生き方を教えてくれたように感じています。」
1990年代当時、ワイン界では濃厚でパワフルなスタイルがもてはやされていました。一方、ルイ・ミシェル氏が目指したのは、繊細でエレガントな味わい。業界の流行に逆らうことに不安を感じ、ジャイエ氏に相談したといいます。
「彼は私にこう言いました。『世界中で人気にならなくてもいいじゃないか。世界の全員を満足させる量を造ることはできないだろう。そもそも君は、そのワインを本当に飲みたいと思うのか?』と。」
この言葉を聞いたルイ・ミッシェル氏は、市場や流行を追いかけるのではなく、自分が飲みたいと思えるワインを造ろうと決意しました。その哲学は今も揺らぐことなく、時代の流れに左右されない、魅力を湛えた味わいを生み続けています。
↑ショップイベントで提供された「ドメーヌ・デュ・コント・リジェ・ベレール」珠玉のワイン
最後にルイ・ミシェル氏は、こんな風に話してくれました。
「私はこのドメーヌのオーナーですが、畑の管理者であり、ワインメーカーであり、セラーマスターでもあり、そして1人のワイン愛好家でもあります。自分が心から飲みたいと思えるワインを、これからも妥協なく造り続けたい。そして、それを飲んだ誰かが『美味しい』と感じてくれたなら、それ以上に嬉しいことはありません」