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2025. 05. 27
生産者来日

エルヴィオ・コーニョからワインメーカーが来日!ラヴェーラから生み出される4つのバローロの個性を語る

 イタリア・ピエモンテ州のバローロ南西部に位置するノヴェッロ村ラヴェーラ。その土地から生み出された高品質なワインでラヴェーラの名前を世界に知らしめた立役者がエルヴィオ・コーニョです。

 創業者であり義父のエルヴィオ・コーニョ氏の意思を受け継ぎ、オーナー兼ワインメーカーとして伝統に忠実なワインを造るヴァルテール・フィッソーレ氏が来日、ラヴェーラのテロワールと最新の取り組み、手がける4つのバローロの個性について熱くお話しいただきました。

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↑伝統に忠実でエレガントなバローロを手がけるエルヴィオ・コーニョの
オーナー兼ワインメーカーのヴァルテール・フィッソーレ氏

■一族が大切に受け継いできたノヴェッロ村ラヴェーラ

 代々ワイン用のブドウ栽培を家業にしたコーニョ家。3代目で創業者となるエルヴィオ・コーニョ氏はラ・モッラ村にあるバローロの名門、マルカリーニ・ワイナリーでワインメーカーとして活躍した経歴を持ちます。60歳でワイナリーを辞めた後、故郷であるノヴェッロ村のラヴェーラにエルヴィオ・コーニョを1990年に創業しました。

 ヴァルテール氏は当時を振り返り、「創業したばかりの頃、ラヴェーラはあまり知られていない地域でした。誰もがラヴェーラはおろか、ノヴェッロ村に興味がなかったのです。そのため、我々がノヴェッロ村、そしてラヴェーラのポテンシャルをワインで表現することで、この素晴らしい故郷を世界に広めたいと思ったのです」と語ります。

 ワイナリーは、ラヴェーラの丘の頂上に位置しています。バローロでは珍しく、所有する17haの畑のうち、11haがワイナリーの周りに位置しています。創業当時から今までピエモンテの土着品種のみを栽培しており、その中でもバローロに使用するネッビオーロはワイナリー近くの南向きの斜面の最も良い区画に植えられています。

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↑ラヴェーラの写真。ワイナリーと周囲に広がる畑の他、遠くには南フランスまで見ることができます。
収穫前には写真のような非常に美しい光景が広がります。

 ラヴェーラの畑は標高が約380mで風通しが良く、夏の昼の気温は3035℃まで上がりますが、夜は20℃ぐらいにまで下がります。この昼夜の温度差がブドウのフェノール(=渋み成分)の成熟に必要不可欠です。さらに、ヴァルテール氏は、「近年、地球温暖化がネッビオーロによい影響を与えてくれている」と話します。

「ネッビオーロは強いタンニンが特徴のブドウなので、バローロを知らない人や初めて飲む人にはその渋さが飲むときのハードルになっていたと思います。ですが、地球温暖化によってバローロ全体の気温が上昇し、ネッビオーロのフェノール(=渋み成分、タンニン)がより成熟するようになりました。20年前の熟成させなければ重たく、渋くて飲みづらいバローロとは異なり、今のバローロは繊細なテクスチャーと柔らかいタンニン、淡い色合い、エレガンスが表現できるようになりました。

 よく比較されるブルゴーニュのピノ・ノワールとバローロのネッビオーロですが、地球温暖化により異なる影響を受けているように個人的には思います。ピノ・ノワールは地球温暖化によってよりしっかりとした味わい、色合いも濃くなっているので、ネッビオーロとピノ・ノワールの地球温暖化の影響は真逆だと考えています。

■エルヴィオ・コーニョの精神

 ヴァルテール氏は、エルヴィオ・コーニョのワイン造りの根底にある哲学を次のように話されていました。

「ワイン造りの中で大切だと考えているのがヴィジョンを持つこと。私たちにとってワインはファッションのような商業的商品ではありません。自分の味わいを信じて情熱をかけることが大切です。ワインが評価誌において○点と評価されるような商業的な成功を収めることも大切かもしれませんが、私たちはそれ以上に自身の信じるアイデアと味わいを突き詰めることが重要だと思っています。」

 そんな哲学のもと、ワイン造りにおいて大切にしている三つのキーワードが「エレガンス」、「テロワール」、「アイデンティティ」です。この三つのキーワードは、バローロのミクロクリマ(局地的な気候のこと。同じ丘の斜面でも高さや斜面の方角、土壌の違いから小さな範囲でも気候が異なること)で構成されるテロワールを表現した、エレガントで現代的な味わい、エルヴィオ・コーニョらしさを表現する伝統やアイデンティティを持つワインの味わいに表れています。

 区画ごとの特徴を表現することを大切にしているため、エルヴィオ・コーニョでは伝統的なアプロ―チを行っています。熟成では、バリックは使用せず、トーストしていない大樽を使用。それに対してヴァルテール氏は、「ブドウを表現するのにオーク樽のニュアンスは付けたくないんです。樽は楽器となって、ブドウをワインにして演奏するもの。無理な化粧をせずに、ブドウのそのままを表現するために大樽を使用しています。私たちが使用しているのはスラヴォニアン・オークの大樽ですが、これは、ブドウ本来の良さをピュアに出してくれます。そこには、ただ普通のワインを造るのではなく、ブドウ本来のアイデンティティを表現したいという思いがあります」と語ります。

「あくまで伝統的なアプローチでワイン造りを行っているので、ワイン造りのアプローチや方針は基本的に変更していません。技術や経験は年を経てよりよいものを得ているので、それによって年々より品質の高いワインが生まれています」と話します。

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↑エルヴィオ・コーニョのセラー。
「ヴァルテール氏がブドウ本来の良さをピュアに表現してくれる」と語るのはスラヴォニアン・オークの大樽

■「テロワールの個性を表現する」 自然酵母の研究と全房発酵の導入

 近年、発酵に使用する自然酵母の研究とエレガントな味わいのための全房発酵の導入を行っているそうです。

 エルヴィオ・コーニョではかねてから自然酵母を使って発酵を行っていましたが、トリノの研究所と一緒に長い月日をかけて、ラヴェーラの土地の様々な野生酵母を採取し、ブドウをピュアに表現するための酵母はどれかと研究を重ねてきました。現在は厳選した4種の自然酵母を使用しています。

 同時に、過度なアルコールは果実味を覆ってしまうとの考えから、2017年から全房発酵(ブドウの果皮と種子、果肉、梗を一緒に醸す醸造方法)を一部で導入しています。

 ワイン造りにおいて、「私たちは化学者ではなく、ワイン生産者・ブドウ栽培者です。なので、化学的なことで考えるのではなく、そのままのブドウとテロワールを表現することを大切にしています」とヴァルテール氏は語ります。

■ラヴェーラから生み出される4種類のバローロの個性

 エルヴィオ・コーニョが手がけるバローロは、バローロ カッシーナ・ヌオーヴァ、バローロ・ラヴェーラ、バローロ ブリッコ・ペルニーチェ、バローロ ヴィーニャ・エレナ・リゼルヴァ・ラヴェーラの4種類です。

 ヴァルテール氏は、「私たちのバローロは全てラヴェーラのブドウを使用していますが、4種類のバローロそれぞれにアイデンティティがあります。私たちは、区画に合わせた3種類のネッビオーロのクローンを栽培、熟成期間の長さの違い、全房発酵の割合を変更するなどして、それぞれのバローロのアイデンティティを表現しています」と語ります。

 エルヴィオ・コーニョで最も注目すべきは、3種類のネッビオーロのクローンを栽培しているという点です。ヴァルテール氏も「ネッビオーロのクローンが私たちのテロワールをワインに表現してくれる」と語ります。最も一般的なネッビオーロのクローンでテロワールを表現することに長けた「ランピア」、タンニンが豊富で凝縮度の高いワインを生む「ミケ」、華やかなアロマと非常になめらかなタンニンをもたらす「ロゼ」と、所有するラヴェーラの畑を細かく分類し、区画に合わせてクローンを選定しています。

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↑エルヴィオ・コーニョのワイナリーとバローロ・ラヴェーラ、バローロ カッシーナ・ヌオーヴァの畑。
南向きの斜面にネッビオーロ・ミケとネッビオーロ・ランピアを栽培している。
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↑バローロ ブリッコ・ペルニーチェの畑。
石灰質土壌で、ネッビオーロ・ランピアを栽培している。
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↑バローロ ヴィーニャ・エレナ・リゼルヴァ・ラヴェーラの畑。
1haと小さな区画でネッビオーロ・ロゼを栽培している。

 ヴァルテール氏はバローロの熟成について「素晴らしいワインは最初から素晴らしいのです。親しみやすさもあるものの、このワインにはしっかりとした果実や酸味も感じられるので、高い熟成ポテンシャルを持っています。バローロは熟成と共にアロマが変化しますが、若いころでも熟成しても、ブドウのピュアな果実やそれぞれのワインの個性を味わえるようなワインを造りたいと思っています」と話します。

 自身が手がけるバローロの楽しみ方について、「私のバローロすべてに言えることですが、どのワインもアロマティックで、グラスの中で注いでからどんどん香りが変わります。ぜひグラスに注いだ直後、そして時間を置いてまた香りを嗅いでみてください。」と語ります。

 ラヴェーラのクリュから4種類の個性が異なるバローロを生み出すエルヴィオ・コーニョ。それぞれのワインに込めたヴァルテール氏の思いは、次の言葉から強く感じられました。

「私たちのバローロがベストなワインだとは思っていませんが、それぞれのワインが魂やパーソナリティ、アイデンティティを持っています。カッシーナ・ヌオーヴァの親しみやすさ、ラヴェーラのラヴェーラらしさ、ペルニーチェのクラシックさ、エレナのユニークさ。私たちはそれぞれのワインにアイデンティティを見出して4種類のバローロを生み出しているのです。」

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↑左から)2022年ランゲ・アナス・チェッタ、2021年バルベラ・ダルバ ブリッコ・デイ・メルリ、2023年ランゲ・ネッビオーロ モンテグリッリ、2020年バローロ・ラヴェーラ、2019年バローロ ブリッコ・ペルニーチェ、2018年バローロ ヴィーニャ・エレナ・リゼルヴァ・ラヴェーラ