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2025. 04. 25
生産者来日

バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドより新醸造責任者ジェローム・アギーレ氏が来日 『ムートン・カデ』が見据える未来とは

 エノテカ株式会社(本社:東京都港区、社長:堀 慎二)が、正規代理店として取り扱うフランスのワイン生産者バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド」より、2022年から醸造責任者を務めるジェローム・アギーレ氏が来日し、プレス向けセミナーを開催しました。

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↑新醸造責任者のジェローム・アギーレ氏。

 「高品質なワインを、もっと身近に楽しんでもらいたい」というフィリップ・ド・ロスチャイルド男爵の想いから、1930年に誕生した『ムートン・カデ』。リーズナブルな価格ながら、高い品質を誇ります。そんな『ムートン・カデ』のワインメイキングを指揮するのが、2022年に醸造長に就任したジェローム・アギーレ氏です。

■時代の嗜好の変化に合わせて

 誕生から95年を迎える『ムートン・カデ』は、時代とともに進化しているのだとジェローム氏は言います。

「現在『ムートン・カデ』は、4つのコレクションがあります。一つは親しみやすいスタイルの『クラシック』、二つ目はバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵へのオマージュとして誕生した『キュヴェ・ヘリテージ』、三つ目はムートン・カデのワンランク上の『レゼルヴ・ムートン・カデ』、そして2022年に発売された『ムートン・カデ・オーガニック』です。

『ムートン・カデ・オーガニック』は、近年の地球温暖化をはじめとする環境問題に対する意識の高まりを受けて、3世代目のフィリップ・セレイス・ド・ロスチャイルド氏がリリースしました。若い世代にも楽しんでもらえるようなフレッシュな味わいと、カラフルなラベルが特徴です。」

 時代の変化に敏感に反応し、より良いワインを生み出すには、消費者の声に積極的に耳を傾けることが大切なのだそう。

「昨年、ボルドーで『ボルドー・フェット・ル・ヴァン』というワインフェスティバルが開催され、そこで『ムートン・カデ』を提供しました。実際に『ムートン・カデ・ルージュのフルーティーさは、伝統的なボルドーワインとはかなり異なる。素晴らしいですね』『若い消費者として、飲みやすいワインを評価します』といったお客さまの生の声を聞くことができ、非常に多くの学びや気づきが得られました。このような場で地道に情報収集を行い、彼らの変化する嗜好を捉えることで、常に時代に寄り添ったワイン造りができるのだと思います」

■『ムートン・カデ』に欠かせない"人との繋がり"

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↑ムートン・カデのブドウ栽培農家たち

 世界中で愛される『ムートン・カデ』のワイン造りでは、人と自然との繋がりを大切にしています。ここで言う人とは、生産者やお客さまをはじめ、『ムートン・カデ』に関わる全ての人を表しますが、特にパートナーであるブドウ栽培農家の存在は欠かせません。

「ボルドーのテロワールを忠実に表現するためには、フレッシュでありながらしっかりと熟したブドウが必要不可欠です。そのために私たちはまず土壌にこだわり、ボルドーでも最上級の粘土白亜質土壌を選出しました。しかし、素晴らしい土壌だけでは良いブドウを造ることはできません。土地や気候に対する深い理解と、自然を愛する心を持つ栽培農家が必要なのです」

 現在『ムートン・カデ』では、ジロンド川の右岸に位置するブライ・コート・ド・ボルドーをはじめ、ボルドー各地に所在する厳選した約150人の栽培農家と契約しています。彼らが育むブドウの多様性を活かし、ボルドーのテロワールが持つ魅力を最大限に表現するよう努めているのだそう。

「栽培農家とは、単なる契約関係を超えた深い信頼と共感を育むことを大切にしており、基本的に3年以上の長期契約を結んでいます。中には、3世代に渡って契約している栽培農家もいます。契約後は毎日畑や醸造場に足を運び、区画ごとの収穫時期を一緒に決めたり、ワインのブレンディングや醸造もともに行っています。このような栽培農家の方々とのコミュニケーションの積み重ねが、『ムートン・カデ』の品質に繋がっていくと考えています」

 さらに、近年では5年ほど前に導入された専用アプリ『Mouton Cadet application』を通じて、ブドウ栽培農家と『ムートン・カデ』チームとの情報共有が進んでいます。

「このアプリは、ワイン造りに関する最新情報を共有したり、ブドウ栽培農家からフィードバックを受け取るための大切なツールです。栽培農家とは、ワイン造りに関する記事やアンケートを通じて日々の進捗や課題を共有しています。このような密な情報交換を通じて、私たちは互いに学び合い、ワインの品質を高めているのです」

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↑専用アプリ『Mouton Cadet application

■ボルドーワインの未来ために

 近年の気候変動や世界的なワイン消費量の減少は、ボルドーをはじめとする生産者にとって大きな課題です。ジェローム氏は、この困難な時代において、「私たちはボルドーというテロワールが生み出す素晴らしいワインを次の世代に繋いでいく使命があると感じています」と語ります。

「私たちはオーガニック認証を取得し、環境にやさしい取り組みを続けています。2021年にはアグリカルチャー・ビオロジック認証を取得し、2025年にはJAS(日本の有機認証)も取得しました。これらの取り組みを通じて、健康な土地を次世代へと引き継いでいけると考えています。」

 また、若き栽培農家に自分たちが持つサヴォアフェール(savoir-faire:日本語で「匠の技」の意味)を積極的に伝えることも重要な取り組みのひとつと語るジェローム氏。テクニックだけでなく、ワイン造りに対する精神を伝えることが重要だと言います。

「すべては剪定とブドウの樹の成長状態をよく観察することから始まります。私たちの目標は、ブドウが育つ土壌を健康に保ち、気候に合ったぶどう畑の管理を行うことです。また、周りの自然環境や生きものにも配慮し、生態系とワイン造りの良い関係を築きます。ワイン造りの全過程で、ブドウ、土、気候、自然が一体となるバランスを大切にしています。」

 そしてジェローム氏は最後に、このようにお話ししてくれました。

「私たちはこれからも謙虚な姿勢で、真摯に人と自然、そしてワイン造りに向き合い続けます。そして、飲んだ人が感動できるような美味しいワインを届けていきたいと思っています。この美味しさを、ぜひ皆さんにも体験していただけたら嬉しいです」