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「パスカル・ジョリヴェ」が6年ぶりに来日!オーナーが語る、自然派ワインへのこだわり
エノテカ株式会社(本社:東京都港区、社長:堀慎二)が正規代理店として取り扱う、フランス・ロワール地方のワイナリー、「パスカル・ジョリヴェ」からオーナーのパスカル・ジョリヴェ氏が6年ぶりに来日し、ショップでのテイスティングイベントを開催しました。近年ブームになっているナチュラルなワイン造りにおいて、先駆者的な存在と言えるパスカル・ジョリヴェ氏のこだわりを訊きました。

↑6年ぶりの来日となったオーナーのパスカル・ジョリヴェ氏。
パスカル・ジョリヴェは、「できるだけ自然に、手を加えないこと」をモットーに、フランス・ロワール地方のサンセールとプイィ・フュメで活躍する自然派ワイナリーです。彼らのファミリーがワインビジネスに携わるようになったのは1926年、来年で100年の節目を迎えます。「パスカル・ジョリヴェ」というブランドを立ち上げたのはパスカル・ジョリヴェ氏自身で、1987年のことでした。
当時、自社畑を所有していなかったジョリヴェ氏は、醸造面で独自のスタイルを確立しました。それが現在のパスカル・ジョリヴェのスタイルである、ピュアでエレガントなワインにつながっています。
■何を「したい」かではなく、何を「したくない」か
ジョリヴェ氏は「ワインに化学的な介入をしないこと」を追求し、1990年に当時としては革新的な設備を備えたセラーを建設。ロワール地方では画期的だった温度管理が可能なステンレスタンクを導入しました。自身のワインブランドを立ち上げる前はシャンパーニュ・メゾンで働いていたというジョリヴェ氏。この最新鋭の設備は、シャンパーニュ・メゾンでの経験を生かしたものであり、当時のロワールではほとんど見られなかったものです。
1990年当時、発酵前にSO2(酸化防止剤)を複数回添加するのが主流だった中で、パスカル・ジョリヴェではそれを一切行わず、清澄剤を使用せず、完全に自然酵母のみで発酵させていました。こうした手法は、当時はまだ一般的ではなく、従来の製法とは一線を画すものでした。
さらに、1993年にサンセールで初めての自社畑を購入し、2001年には「グラヴィティシステム」を導入した醸造施設を新設。これは、ワインの移動にポンプを使用せず自然な落差を利用することで、よりナチュラルなワイン造りを実現するものです。
ジョリヴェ氏はワイン造りにおいて、「何をしたいかではなく、何をしたくないか」を重視し、極力シンプルなプロセスを貫いています。だからこそ、SO2(酸化防止剤)無添加、清澄剤の不使用、自然酵母の使用などナチュラルな製法にこだわるのです。「小さなディテールが大きな違いを生むのだから」と彼は語ります。
■すべてはソーヴィニヨン・ブランの魅力を引き出すために

↑パスカル・ジョリヴェの畑
このようなナチュラルなワイン造りは、すべてソーヴィニヨン・ブランの魅力を最大限に引き出すために行われています。
ソーヴィニヨン・ブランは、現在ニュージーランドやオーストラリア、チリ、アメリカなど世界中で生産されていますが、ジョリヴェ氏は「ソーヴィニヨン・ブランのホームはロワールだ」と強調します。その理由は、この地の冷涼な気候や土壌、そういったテロワールがソーヴィニヨン・ブランの個性を最も際立たせると考えているからです。
「このベストなテロワールを生かすために、できるだけ人工的な介入を排除している」と彼は言います。パスカル・ジョリヴェでは、一般的な白ワインの製造工程で行われる清澄(=濁りを除去する作業)を実施しません。清澄によって取り除かれる成分の中にワインの個性を形作る要素があると考え、それを保持することでブドウ本来の酵母を生かし、よりナチュラルなワインに仕上げています。
温度管理が可能なステンレスタンクを4℃に設定し、時間をかけて自然に沈殿させることで、果実味と酸味が調和したエレガントな味わいを生み出します。
人工酵母を使用すると発酵は1~2週間で完了しますが、自然酵母を使うと1~2ヶ月かかります。発酵に時間をかけることで、ワインの香りと味わいに奥行きが生まれるのです。「人工酵母はアロマティックな香りを強調するが、自然酵母は穏やかな香りと滑らかな味わいをもたらす」とジョリヴェ氏は語ります。
その結果、パスカル・ジョリヴェのソーヴィニヨン・ブランは、自然な酸のバランスを持ち、スムースな口当たり、そしてクリーミーなニュアンスを持つ独自のスタイルを確立しています。
■テクノロジーとの共存、そして未来への展望
ジョリヴェ氏は、テクノロジーをワイン造りに取り入れつつも、「ワインメイキングの主体は人間であるべきだ」と語ります。温度管理のような正確性が求められる部分はテクノロジーに頼りますが、それ以外は人間の感覚や哲学を大切にすることで、個性あるワインを生み出しています。
栽培面では2006年からオーガニック農法を実践。2023年にはサンセールとプイィ・フュメの単一畑すべて(50ha)でオーガニック(AB)認証を取得し、2025年には全ての畑をオーガニック化する予定です。
一般的なワイナリーでは、オーガニック栽培の認証を取得してからナチュラルな醸造に移行することが多いですが、パスカル・ジョリヴェでは逆のアプローチを取っています。まず、ワインメイキングをナチュラルにすることを優先し、その延長線上でオーガニック農法を導入したのです。
また、SO2(酸化防止剤)の使用を最小限に抑えることで、果実味を失わず、熟成のポテンシャルを持つワインを生み出しています。「ナチュラルな製法を採用することで、一般的なソーヴィニヨン・ブランと比較して10年~20年の熟成が可能なワインを造り出すことができる」とジョリヴェ氏は語ります。
このように、パスカル・ジョリヴェは、ナチュラルなワイン造りとテクノロジーの融合により、独自のスタイルを確立してきました。自然と向き合いながら進化を続ける彼のワインは、これからも世界中のワイン愛好家を魅了し続けることでしょう。
