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2024. 11. 08
生産者来日

オーストラリア、ヤラ・ヴァレーのパイオニア「ヤラ・イエリング」来日 ワインメーカーが語るテロワールとワインメイキング

 エノテカ株式会社(本社:東京都港区、社長:堀慎二)が正規代理店として取り扱う、オーストラリア、ヴィクトリア州の銘醸地ヤラ・ヴァレーを代表するワイナリー「ヤラ・イエリング」のワインメーカー兼ゼネラル・マネージャー、サラ・クロウ氏が来日し、ショップでのテイスティングイベントを開催しました。サラ氏にヤラ・ヴァレーのテロワール、そしてこだわりのワインメイキングについて語っていただきました。

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ワインメーカー兼ゼネラル・マネージャーのサラ・クロウ氏

 ヤラ・イエリングは、ヤラ・ヴァレーにおけるワイン造りのパイオニア的ワイナリーです。ヴィクトリア州のウルンジェリ・カントリーに位置し、1969年に植物学者のベイリー・カラドス氏により設立されました。卓越した品質と個性を持つワインを造ること、冷涼な気候を活かしたワインを造ることを信念として、立ち上げられました。1973 年、ボルドーワインに影響を受け、カベルネ・ソーヴィニヨン主体のボルドーブレンドで造る『ドライ・レッド・ワイン No.1』 と、北部ローヌワインに影響を受け、シラーズを中心に造る『ドライ・レッド・ワイン No.2』 をファーストヴィンテージとしてリリースしました。1987 年には 1984 年ヴィンテージの『ドライ・レッド・ワイン No.1』 がロンドンのコンペティションにて「最優秀ニューワールドワイン」に選出。これを機にこれまで注目されていなかった静かなヤラ・ヴァレーの地が国際的に知られるようになりました。

 2008 年、カラドス氏が逝去し、彼のワインの熱狂的なファンによってワイナリーは引き継がれました。そして2013 年よりサラ氏がワインメーカー兼ゼネラル・マネージャーに就任。カラドス氏が選んだ品種や信念を引き継ぎ、ワイン造りを行っています。

■ヤラ・ヴァレーの優れたテロワール

 ヤラ・ヴァレーが位置するのは、メルボルンから東へ車で約1時間の場所。ヤラ・ヴァレーの面積3,130k㎡のうち、ブドウ畑の総面積は2,837haと、ブドウ栽培は大きな面積を占めています。ヤラ・ヴァレーはヴィクトリア州の中でも非常に冷涼なエリアで、サラ氏によると1月の平均気温は18.9*1とのこと。

*1:オーストラリアは南半球に位置するため、1月は真夏にあたる。(東京の7月平均気温が28.7度 気象庁2024年観測)

 冷涼な気候だけでなく、栄養が乏しい水はけのよい土地に加え、年間雨量1,000mmの雨が春と冬に集中していることからブドウ栽培に非常に向いた土地です。ピノ・ノワール、シャルドネ、シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨンと多様な品種が植えられていることに加え、標高や地形による違いがワインの味わいに違いをもたらします。

 ヤラ・イエリングでは28haの畑を所有しており、サラ氏が語るには、ヤラ・ヴァレーの中では比較的小規模なワイナリーとのこと。畑は丘陵地に位置し、斜面は北向きで緩やか、岩や小石、砂利が非常に多い古代の土壌となっています。サラ氏は、「北向きの斜面によって日が良く当たり*2、春の霜から畑を守ることができるのです」と教えてくれました。

*2:南半球では北に向かうほど温かく、南へ向かうほど寒い。

■ヤラ・イエリング流こだわりのワインメイキング

 ヴィンヤード・マネージャーを担当するアンドリュー・ジョージ氏はヤラ・ヴァレー出身で、イエリングバーグにて 10 年間の修行経験を持っています。ヤラ・ヴァレー・ワインショー*3にて「最も成功したブドウ畑」を 2020 年から 3 年連続で受賞しています。

*3:ヤラ・ヴァレーのワイン産業を支援することを目的としたワインショー。近年、オーストラリアを代表するワインショーとして高い評価を得ている。

「我々の畑では全く灌漑を行っていません。」とサラ氏。

「ヨーロッパの畑を巡ったカラドス氏にとって、灌漑をしないことは非常に重要でした。そのため、非常に収量が少なく、2t/ac(4.9/ha)ほどの低収量となっています。畑は手作業で細やかに管理されており、果実の凝縮感や冷涼な気候がもたらす自然な酸味を感じていただけると思います」

 ブドウは房ごとに全て手摘みで収穫され、その後ワイナリーの冷蔵庫へ運ばれます。その後、選果を行いますが、サラ氏はこの選果を重要視しているそうです。「選果するときは、自分たちがどんなワインを造りたいかイメージしてから行います」と、房ごと収穫したブドウを全房発酵するのか、それとも除梗するのか、品種やスタイルによって選果を行っていることを教えてくれました。

「非常に労働力がかかりますが、最終的に造られるワインは、そうした時間をかけるだけの価値があると思っています」と、選果とワイン造りへの想いを話すサラ氏の姿が印象的でした。

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カラドス氏考案の小型発酵槽「ティー・チェスト」

 発酵には 1973 年当初よりカラドス氏考案の小型発酵槽「ティー・チェスト」*4を用い、抽出とプレスは非常に穏やかに優しく行われています。精緻なタンニンを取り出すことを心がけており、ドライなワインになりすぎないように注意しているとのことです。

*4: 木製樽にステンレスの内張りをした発酵槽のことで、ブドウを発酵させる際に収まる適切な量を保持するために開発された。

 2022年のハリデー・ワイン・コンパニオン・アワードにおいて、「ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」 を受賞、そして2017年に女性で初めてジェームス・ハリデーの「ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」に選出されたサラ氏。ワイナリーとして、またワインメイキングにおいてのビジョンについてこう語りました。

「オーストラリアを代表する生産者として、理想的なワインを造ること、皆様がセラーにぜひ入れておきたいと思っていただけるコレクション性の高いワインを造りたいと考えています。お客様の人生の特別なタイミングを祝うワインとして、ヤラ・イエリングを開けていただいており、それこそが私たちの目指すところなのです」。

 歴史や伝統、受け継いできた土地に敬意を払い、オーストラリアを代表するワイン生産者の1 つとして確固たる地位を築くヤラ・イエリングのワインと、サラ氏の想いをぜひワインを通じてご体感ください。

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ヤラ・イエリングが手がけるワイン6種