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2024. 08. 19
生産者来日

マスター・オブ・ワインのローマン・ホーヴァース氏が初来日!オーストリアの注目生産者「ドメーヌ・ヴァッハウ」を紐解く4つのキーワードとは?

 エノテカ株式会社(本社:東京都港区、社長:堀 慎二)が20234月より正規代理店として取り扱うオーストリアの協同組合ワイナリー「ドメーヌ・ヴァッハウ」より、マスター・オブ・ワインを有するワイナリー・ディレクターのローマン・ホーヴァース氏が初来日し、ショップでのテイスティングイベントや、スタッフ向けセミナーを開催しました。

※:マスター・オブ・ワインとは、英国に拠点を置くマスター・オブ・ワイン協会が認定するワイン業界において最難関の資格。
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↑マスタ―・オブ・ワインを有するワイン・ディレクターのローマン・ホーヴァース氏

 ヨーロッパのほぼ中央に位置するオーストリア。北海道と同程度の国土を持つこの国のワイン造りの歴史は古く、今から約2,000年前にケルト人がブドウを植えたことから始まります。以来、ユニークなブドウ品種から多様なワイン文化を進化させてきたオーストリアですが、諸外国への輸出が始まったのは1990年頃とまだ30年あまりです。今でも生産されるワインの7580%は自国で消費されているため、フランスやイタリアなどのワイン大国のワインと比較すると、日本では目にする機会が少ないかもしれません。

 そんな中、オーストリアワインの輸出を牽引しているワイナリーのひとつが「ドメーヌ・ヴァッハウ」です。オーストリアの中でも指折りの銘醸地、ヴァッハウの地に12世紀以前より存在する歴史あるワイナリーです。

 そのドメーヌ・ヴァッハウを指揮しているのが、マスター・オブ・ワインの資格を有しワイナリー・ディレクターを務めるローマン・ホーヴァース氏と、ワイナリー・ディレクターのヘンツ・フリッシェングルーバー氏です。彼らがドメーヌ・ヴァッハウで働き始めてからというもの、サステナブルなブドウ栽培をはじめとした大幅な組織改革を実施するなど、ワインの質向上に貢献してきました。その成果が実り、現在「ドメーヌ・ヴァッハウ」のワインは、繊細でエレガントな味わいで国内外の専門誌や評価誌から高い評価を受けています。

 今回、ワイナリー・ディレクターのローマン・ホーヴァース氏が初来日し、彼らが造る唯一無二のワインについて4つのキーワードで説明してくれました。

◆キーワード1:ヴァッハウエリア

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ドナウ川沿いの丘陵地に広がるブドウ畑

 「ドメーヌ・ヴァッハウ」は、オーストリア北東部のニーダーエスタライヒ州のヴァッハウエリアに位置します。ヴァッハウエリアは、オーストリアで最も古いワイン産地と言われており、その美しい街並みから世界遺産にも登録されています。

「小規模な地域ですが、修道院やブドウ畑が広がる街並みは、本当に美しいです。そして、そこで生まれるワインもまた美しいのです。」とホーヴァース氏は語ります。

 この地域では、ヨーロッパを東西に結ぶ国際河川、ドナウ川に沿うような形でブドウ畑が広がっており、ドメーヌ・ヴァッハウは、その中でも特に急峻なエリアを含む約400haもの畑でブドウ栽培を行っています。

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ヴァッハウエリアの地図

 特筆すべきはそのテロワールで、東からはこの地域特有の温暖で乾燥した内陸性気候がもたらす暖気が、西からはアルプスから吹く冷風などが流れ込んでくるため、ドナウ川流域では東に行くほどより暖かく、西に行くほど冷涼な気候となります。さらに、南のデュンケルシュタイナーと北のヴァイドフィアテルという森林地帯からは冷たく湿った空気が流れ込んでくるという、稀有なテロワールを持っています。こうした気候条件に加え、急斜面での栽培、片麻岩などの特徴的な土壌が、ドメーヌ・ヴァッハウのワインに豊かなアロマをもたらしているのだそうです。

◆キーワード2:協同組合

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ワイナリーの外観

 ドメーヌ・ヴァッハウ最大の特長とも言えるのが、協同組合ワイナリーであることです。協同組合ワイナリーとなったのにはきっかけがあります。遡ること約100年前、当時は貴族であるシュターレンベルク家がワイナリーを所有していましたが、192030年代の世界恐慌を機に畑を分割し、それぞれ200軒を超える農家に売却することとなりました。 しかし農家が各自で醸造設備を構えることは現実的ではなく、協同組合という形で運営されることになったのです。そして現在では、ドメーヌ・ヴァッハウには約250もの栽培農家が所属し、それぞれが1~2haの畑を所有しています。

 一般的に、異なる価値観を持つ栽培農家が集まる協同組合では、意思の統率がとりやすい家族経営と比べると、品質を高めるのは難しいと言われています。しかし、「ドメーヌ・ヴァッハウ」では栽培農家と密なコミュニケーションをとることで高い品質を保っています。

「畑ごとのブドウの個性を引き出すために、収穫日はそれぞれの栽培農家と相談しながら決定しています。」とホーヴァース氏。

「農家の中には数世代に渡って畑を継いでいる家もあります。急峻な畑には機械が入ることができず、作業は基本的に手作業なので、大変なことも多いです。しかし"私たちは家族であり、ワイン醸造家である"という考えのもと、栽培農家と一丸となりワイン造りに情熱を注いでいるのです。」とホーヴァース氏は語ってくれました。

◆キーワード33つの品質カテゴリー

 現在、ヴァッハウエリアのワインは、地域のワイン協会年設立の生産者協会「ヴィネア・ヴァッハウ」が定めた3つの品質カテゴリーに分類されています。最上級クラスの「スマラクト」、ミディアムボディでエレガントなスタイルの「フェーダーシュピール」、そして軽快なタイプの「シュタインフェーダー」です。

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「シュタインフェーダー(若草)」、「フェーダーシュピール(鷹狩り)」、「スマラクト(エメラルド色のトカゲ)」とそれぞれユニークな名前が付けられている

 それぞれ味わいの特長が異なりますが、特にドメーヌ・ヴァッハウが造る最上級クラスの「スマラクト」についてホーヴァース氏は、「しっかりとした骨格と凝縮感があり、若いうちから楽しめるだけでなく、1520年以上の熟成も可能です」と述べています。

◆キーワード4:品種

 ドメーヌ・ヴァッハウでは、生産するワインの約95%を白ワインが占めています。主要品種はグリューナー・ヴェルトリーナーとリースリングで、ワインはいずれもオーストリアらしい繊細でエレガントなスタイルに仕上がっています。

「グリューナー・ヴェルトリーナーは水分量の多い土壌を好むので、比較的傾斜の緩やかな畑で栽培しています。一方でリースリングは、斜面に広がる畑の中でも標高が高く、石がごろごろと転がっているような畑で栽培しています」とホーヴァース氏は説明します。

 ふたつの品種を比較すると、リースリングの方がよりシャープな酸を持つそうで、最上級クラスの「スマラクト」の味わいについては次のように語っていただきました。

「『グリューナー・ヴェルトリーナー・スマラクト・リード・ケラーベルク』は、熟成させるとまるでブルゴーニュのプルミエ・クリュのような深い味わいを楽しむことができます。また『リースリング・スマラクト・リード・アッハライテン』は、ドイツのグローセス・ゲヴェックスのようなニュアンスを持っています」

 また、繊細な味わいの日本食とヴァッハウのワインは非常に相性が良く、ホーヴァース氏は鮨屋で体験したガリとグリューナー・ヴェルトリーナーの組み合わせが特にお気に入りだったそうです。

※:ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会VDP.が制定するワインの格付けにおいて最上級とされる辛口ワイン
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プレスセミナーで提供したワイン8種類。

「日本の皆さんにヴァッハウの魅力を知ってもらいたい」と熱い想いを語るホーヴァース氏が率いる「ドメーヌ・ヴァッハウ」にぜひご注目ください。